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月村了衛『機龍警察 自爆条項』(祝『NOIR』BD-BOX発売記念)

TVアニメーション『NOIR (ノワール)』 BD-BOX(仮) [Blu-ray]ノワールBD-BOX発売おめでとー! じつは私、真下耕一監督の大ファンで、アニメ監督ではドラえもんの寺本幸代監督とならぶ二大監督だったりして。

BDはちゃんと予約買いしました。後悔はしてない。だって買わなかったらのちのち後悔することが確定してるから。藤子アニメ『チンプイ』のDVD-BOXが12万とか聞くと買っててよかったって思うよ。ということで、次にまとまったお金が入ったらファントムのBD-BOXを買ってもいいですか? いいですよね。

とりあえず、第6話の「迷い猫」がBDで観られて最高だ-! 「やるわ」から最後までの流れが好きすぎる。

なにがすばらしいかって、canta per meをバックミュージックに各人物の表情のアップが淡々と流れるだけ、超手抜きといわれてもしかたない演出なのに、それだけでおのおのの感情が伝わってくるという、しかも傍観者のミレイユとアルテナと猫までも含めてきちんと映している完璧さ、そしてラストのラストは一転して引いたカメラから雪景色を映すだけという、最高だ-!

これがいいたかっただけです。BD仕様レビューは他のどなたかがしてくれると思うので、私は原作者の月村先生の著作を紹介することにする。

機龍警察 自爆条項 (上) (ハヤカワ文庫JA)警視庁でパワードスーツの整備をさせれば右に出る者のない技術班の鈴石主任。その機体の実際の運用に関しては随一の元IRFテロリスト、ライザ・ラードナー警部。

そんなラードナー警部に罰を下しにテロリストたちが来日した。テロ被害者として彼女を憎んでいる鈴石主任は本来それを歓迎すべきなのだけど、やっぱり今回彼女の命を狙うテロリストたちもまた憎いし、自身の罰を望んでいる彼女の思い通りになって彼女が死ぬのもそれはそれで面白くないしで、主任は結局警部の機体を完璧に整備するはめに陥る。

自分で書いていてわけがわからなくなった。

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)そんな『自爆条項』は機龍警察シリーズの第2作目。

正直言って、第1作目の『機龍警察』はミステリーとして普通に楽しめる程度で、それほどおもしろくありません。絵にしたら映えるのになあ、というシーンも多く、やっぱりこのひとアニメの脚本やってたほうがよかったんじゃないかと思ったくらいです。NOIRの原作者という理由のみで買っただけになおさら。

そんなデビュー作から、本作の日本SF大賞受賞、3作目の『暗黒市場』で吉川新人賞を受賞とここまで人気シリーズに発展するなんて誰が想像できただろうか。でも、この評価は間違ったものではありません(「SF」大賞としてはどうかと思うが)。私も1作目の気分を引きずって気が進まないまま自爆条項を読みましたが、考えを改めました。

1作目で正直いちばん謎キャラだったライザの過去が描かれる2作目の自爆条項、その舞台は現在日本と過去アイルランドパートにわかれます。とくに彼女がどうしてテロリストになったのか、どうしてテロリストをやめたのか、そして最後まで救いが無い鬱屈したアイルランドパートがすばらしい。

そして現在日本にいるのは、ライザが所属していたテロ組織IRFのテロによって家族をすべて失った鈴石緑技術主任。2人の間に割り切れない想いが流れるなか、作戦は決行される……なんというNOIRですか!

「ラードナー警部には……赤が似合うと思います」 (Kindle位置No.1743)
TPOを考えるとラードナー警部の服装はよろしくないのでは、という文脈でこの答えは微妙におかしい。しかし、そのすれちがいの上で2人の心情が見事に交錯する。このシーンは至高です。
タグ: 本・SF

若竹七海「幸せの家」(『宝石 ザ ミステリー3』)

宝石 ザ ミステリー3若竹七海ホイホイの流れで今年も買ってしまったなんてそんなこと。(前作の記事:若竹七海「暗い越流」(『宝石 ザ ミステリー2』

ミステリーアンソロジー『宝石』シリーズの第三弾。今回は東野圭吾・湊かなえ・今野敏・誉田哲也・東川篤哉・笹本稜平・若竹七海・小杉健治・長岡弘樹・石持浅海・深水黎一郎・深町秋生・大山誠一郎・川崎草志・長沢一樹の15人。ただし例年どおり東野圭吾は電子版未収録なので気をつけるように。

今回のベストは湊かなえ、石持浅海、若竹七海。湊かなえはあいかわらずのドロドロなんですが、文章自体は前回ほどジメジメしてなかったので、収録作のなかではトップです。

石持浅海はたぶんいつもどおりであるのだろうオカルト小説。私にとってはNOVA、SF宝石と短編でのつきあいが続いてます。彼とは相性が良いことが発覚しつつあり、長編読みたいフラグがかかりました。

そして安定のおもしろさを誇る若竹作品。いわゆる本格ミステリ、そのなかでもとくにメタミステリが嫌いな私としては、そうでないだけで評価高めざるをえない。今回の収録作品で多かったんだもの。

若竹七海の「幸せの家」は収録作のなかでは楽しめるほうですが、若竹作品としては良くも悪くも普通なので、あの冴え渡る淡々とした嫌味文を読みたい方は推協賞の「暗い越流」をお読みになるのがよろしいと存じます。

彼女の作品は文章に魅力がありすぎて、本人が気合い入れて考えていると思われるトリック部分などもはやどうでもよくなるオチが待っていること多数。「手紙嫌い」なんてその最たるもの。作者ノリノリで書いているとしか思えない途中部分がユーモアにあふれすぎて、オチはもはやおまけと化していた。

プレゼント (中公文庫)だからこそ逆パターンで「たぶん、暑かったから」のようにオチをぶんなげられても私は許す!

葉村晶シリーズ第一弾『プレゼント』のスピンオフ作品がでるようです。どさくさにまぎれて『プレゼント』の電子化してくれたら私すごく喜ぶ。一年待ったんですけど、どうしてそれでも『依頼人が死んだ』と『悪いうさぎ』しか電子化してくれないんですかやだー。
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【GHOST】ゴーストトリック【TRICK】

ゴースト トリック NEW Best Price! 2000逆転裁判の巧舟ディレクターの作品ということでゴーストトリック(GHOST TRICK)をプレイ。

本編のパズルゲー部分はぼちぼち。大きな不満はなし。早送りシステムがあったほうがもっと快適だと思ったくらい。

それとシステムに関連する部分で、バックログの導入と(本編クリア後)任意のチャプターをやり直せるというところはとてもよかったです。なんで逆転裁判に入れないの!(←逆転検事2の4話後半やり直したいけどそこまで進めるのめんどい人)

で、私にとって肝心のノベルゲー部分ですが、たしかにこれは巧舟。わかる人はキャラの掛け合いテキストだけで巧舟さんだとわかるんじゃないかな。ノリが逆転裁判のままだし、あとカタカナの使い方も独特だし。

キャラクターにしてもヒロインは真宵ちゃんみたいだったりミサイルが出てきたりガントさんっぽいのも出てきたり。とくにヒロインのリンネさんは死にまくり受難ばかりで笑った。巧舟ヒロインの法則なのか。

しかし一方でストーリーはわりとムリヤリ。とくにラストの解決法はデウス・エクス・マキナです。嫌いな人は大嫌いでしょう。

ストレートに言うとKID打越さんみたいなやりかたです。9時間9人9の扉と似たようなSF解決タイプ。まあこの作品の場合999と違って超理論というわけではないですが、でもアレはどうなのか。

あとミステリ的な部分もわりと打越さんそっくりです。終盤は怒涛の勢いで謎解きしていくんですが、理屈っぽすぎてついていけなかったり。そもそも後付けで説明してるような……。

作品のキーである主人公の正体にしても、伏線はあるんですがそれまで「物語」が無いからあまり感情移入できず。正体が明らかになったあとにいろいろ語られるものだからあんまり印象に残らなかったです。

そういうわけでゴーストトリック、シナリオには難アリ。巧さんはそろそろあまりミステリー書かないほうがいいんじゃないかな。暗い事件がかかわらないコミカルな話書いたほうが成功すると思う。(蘇る逆転の追加シナリオのころから質が落ち始めたんだよなあ、ミステリ的な構成)

「細かい整合性は気にしない、打越作品もOK、逆転裁判のテキスト大好き!」という方はぜひプレイを。私も巧舟の魅力はテキストだと思ってるのでシナリオの難など本当はどうでもよく、楽しくプレイできました。
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曽根圭介『熱帯夜』

熱帯夜 (角川ホラー文庫)ようやく、曽根圭介の単行本が全作Kindle化したよ。ひゃっほいです。NOVA2で短編読んだときから、彼の作品をたくさん読みたいと思っていました。そして私のSF勘(感?)は正しかった。彼のSFセンス、ヤヴァいです。

このひと、講談社から出す警察小説はあまりおもしろくないのです。(ただし版元が講談社でも、警察がからまない『藁にもすがる獣たち』は彼の黒さがいい感じに出てて好き。話の組み立ても『熱帯夜』収録作と同様に秀逸)

しかし、そんな乱歩賞的な作品を敬遠したあなた、とてつもない損をしています。本日のおすすめはこれ、角川ホラー系列の『熱帯夜』 推理作家協会賞受賞のそれなりに正統ミステリな表題作、世代間闘争が激化した未来日本らしきものを描くSF「あげくの果て」、ゾンビが人間を食うホラーSF「最後の言い訳」の3作の収録です。

話の構成が3作すべて職人芸で巧い。それでも、作品の魅力は他にあるような気がしてならない。どの作品もダークすぎて笑えない状況設定が多い(とくに、社会の役立たずな老人は死ねテロが起こる「あげくの果て」)にもかかわらず、読んでてなんかすごくウケるんですけどなんでですか。

「熱帯夜」はトリックなんてもはや途中でどうでもよくなってブッチャーさんと主人公のアレしか記憶に残ってないし、「あげくの果て」は難局二号とかいう微妙な名前のスーパースーツらしきもの着たおばあちゃんにあたま抱えたし、「最後の言い訳」はオチで「うひゃひゃひゃひゃひゃwww」とわたしこわれちゃったよ! 「最後の言い訳」はもう黒すぎ、すばらしすぎ、もっとやれ。

読んでいてなんとなく、曽根さんは藤子Fが好きなのかと感じた。藤子FのSF短編「定年退食」「流血鬼」(その他ネタバレにつき自重)のデジャブ。実際に読んだことあるのかはわからないけど、まちがいなく似たセンス持ってる。藤子好きにもおすすめの一冊。
タグ: 本・SF

団地ともお 黒板なんか拭きまくれともお/ヒッチコックな夏だぜともお

2013/7/20 団地ともお 黒板なんか拭きまくれともお/ヒッチコックな夏だぜともお の感想です。

団地ともお 4 (ビッグコミックス)なんだかともおの感想をかきたい気分になったので、かくなり。だって委員長がかわいいんだもん。あと私はケリ子と坂上さんが好きです。坂上さんの声優は能登さんですってよ。君もちり紙のように……!

初感想なので念のため解説しておくと、監督は映画ドラえもんの渡辺歩です。ただし、渡辺イズムはそれほど感じられなく思います。(宇宙兄弟のほうがイズムを感じるかな。とくにEDとか)

黒板なんか拭きまくれともお(原作:4巻)
脚本 あべ美佳/絵コンテ アミノテツロ/演出 丸山由太


原作のこの話の序盤ではテンプレ嫌なキャラだった委員長。アニメではしょっぱなからギャグキャラに化している気がしてならない。じつはあの子鉄道マニアなんだぜ。

お母さんに髪を結ってもらいつつ(ここ重要)、寝ぼけながら学校に向かう委員長。このアニメはCGが微妙と思うことがあるけれど、この話ではそれが逆方向に機能している。トローントローンとした委員長の動きが味。なにこの子かわいい。

「木下君、まだ来てないだろうし」とドアを開けたら普通にはなをほじってるともおがそこに。委員長、原作では一コマですぐにともおに気づいているのに、アニメでは状況を把握するまでに数秒かかっている。「よお」という挨拶に「うん」と返事をしたあと、しばらくしておさげをぴょこん、そして顔を赤くしていいわけ委員長。やっぱりこの子かわいい。

2か月後の日直ではうっかり遅刻な委員長。必死に走って教室に飛び込む。すぐにともおに映し出した前回・前々回と違い、だれもいない教室を映したあと、視点を移動してともおをカメライン。「ごめん。でもこれ以上はあやまらないわよ!」とコミカルな音楽を流したあと、BGM無音のなかでランドセルが倒れる音。ここまでの一連の演出が委員長の心理が感じられてステキです。

ラストはともおと委員長がおにぎりを食べながら将棋で終了。ガムをわたした原作と違って、「委員長、あさごはん食べるひまなかっただろ」とともおの気遣いが感じられる良い改変でございました。

ということで委員長メイン回でした。バレンタインのあのエピソードはアニメでやらないのか気になる。

ヒッチコックな夏だぜともお(原作:4巻)
脚本 田辺茂範/絵コンテ アミノテツロ/演出 丸山由太


なんて渋いカラスなんでしょう。でも、ケリ子を謎に思うあたりあまり頭はよくないようだ。一番わかりやすいキャラだろう。

今回はケリ子関係の演出が楽しすぎる。ずっとケリ子とかかわってて良かったレベル。まず、ケリ子が最初に手を振るときに、ここだけロック調の音楽がかかっている件。色が反転するカラス視点、最初は単なる演出だと思っていたけれど、ケリ子相手ではホラーになっている件。そして限界まで虫取りあみを隠したまま近づく件。明らかにこいつ優遇されてる……!

次回7/27の放送は「父さんを召喚するんだともお」「有楽町で会いましょうともお」
名作が多い父さん回。私は、有楽町で会いましょうの父さん母さんが好きです。
タグ: 本・SF

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』

アルバトロスは羽ばたかない先日は宮内裕介の『ヨハネスブルグの天使たち』刊行と鮎川賞を受賞した七河迦南のデビュー作『七つの海を照らす星』の文庫落ちとなにそれすごいの週でした。宮内裕介は(たぶん)来月の電子化をまつとして、今月は前回紹介した若竹七海つながりもあり、とりあえずは七河迦南。

1作目の『七つの海を照らす星』は、いつもの東京創元社クオリティ。日常の謎にして連作短編集、派手さはないけどほんわか、でもやっぱ地味。いつもの東京創元社。でも、児童養護施設を舞台に描かれる世界がなんとなく好きになって。手をだすは2作目。

そんな『アルバトロスは羽ばたかない』、まさかの My Best Books in 2013 に入ることが濃厚になりました。6月現在でベスト2に入っています。(もうひとつは長谷敏司の『BEATLESS』) 新作出たら無条件で買いの作家にも入りました。

描写力は『七つの海を照らす星』よりもだんぜん上。やっていることは前作と同じではありますが、地味さは解消されたもようです。よくなったのは文章だけでなく構成力も同じ。現在の事件を追っていくあいだにはさみこまれる過去のターン。そこには無数の伏線がちりばれられています。そして、最後に現在に戻ったとき、そこに見えてくるものは。

ここまで綺麗にやられちゃったのはすごくひさしぶり。じつにくやしい。お見事です。

空耳の森 (ミステリ・フロンティア)3作目『空耳の森』はトリッキーな短編集。前作が好きな方は読むしかない。逆にそれだけともいえる。いや、この本もいろいろとすごいのだけど、ちょっとこだわってやりすぎた感があるかも。私は各話がつながってくる後半よりも単独で楽しめる前半のほうが好み。

それでも、すべてをまとめる表題作「空耳の森」は重要。救いのホットラインがつながるのは4作目へのサインか。私としては「あのひと」よりも瞭の再登場を期待してる。

短編としてのおすすめは『アルバトロスは羽ばたかない』収録の「夏の少年たち」と『空耳の森』収録の「アイランド」 いやそれはねーよというところふくめ大好きです。検索したら「アイランド」みんな好きらしく安心した。読み返すと、「いつかあんたを迎えに来る人がいて、もとの世界に戻らなきゃいけなくなったら、字がわからないと暮らしていけないからね」(p46)でちょっと泣く。お姉ちゃん(ノД`)

あと好きな短編は「悲しみの子」 前作でひっかかっただけに、ベースのトリック(フルネーム:光クリスティン)が解けたのはうれしかった。でも細部はわかんなかった。そこまでやるかとちょっと笑う。

あれ? なんで私、一週間で七河迦南3作全部読んでるの? というかなんでデビューから4年半で3作しかないの? こんないい作家を出さないなんて東京創元社め……。

東京創元社仕事しろ。梓崎優のリバーサイド・チルドレンはいつ出るんですか。去年出すって言ったじゃないですか! 去年も去年出すつもりだったが今年出すって言ったじゃないですか! そんな一方で鮎川賞佳作受賞から大活躍な似鳥鶏がいたりして、2人の差はなんなの。
タグ: 本・SF

若竹七海「暗い越流」(『宝石 ザ ミステリー2』)

宝石 ザ ミステリー2推協賞短編部門受賞の若竹七海「暗い越流」目当てでひさびさにミステリーアンソロジーを買い。

収録作家は東野圭吾・湊かなえ・誉田哲也・東川篤哉・笹本稜平・東直己・藤田宜永・門井慶喜・小杉健治・長岡弘樹・深水黎一郎・深町秋生・曽根圭介・ 若竹七海で総勢14人でございます。ただし、私が読んだ電子書籍版では東野圭吾が未収録なので注意。

14作(13作)もあるのだから、なんだかんだで若竹作品以上におもしろい作品もあるんだろうなーと思いながら読んだのですが、なんということでしょう、若竹作品がトップです。私はこの作家が好きなんだ、ということを再認識させられました。

そんな収録作「暗い越流」 ミステリーとしてはよくある話。家族の不和も小説のネタとしてはよくある話。目新しい話なんかじゃありません。しかし、若竹ノベルにはネタの新鮮さなど関係なく。そんなありふれた話をクールな主人公があくまでも淡々に浮き彫りにさせるのが魅力なのです。この突き放し感が最高なのです。そんな文体がすばらしいのです。

依頼人は死んだ (文春文庫)同作者の葉村晶シリーズ好きな方は読もう、読みましょう。文章のキレっぷりがあいかわらずで安心できます。

ちなみにアンソロジー収録の湊かなえ「蚤取り」は若竹七海とは対照的。鬱作品大好きな私ですけど、この人とは相性悪いなあ。こちらは人間の悪意ドロッドロ。語り手がもう病的なので、あることないことみんな悪く取っちゃって、読んでいて気持ち悪くなる。(←ほめ言葉。気持ち悪いとまで思わせたら作家の勝ち) 同じ理由で私は沼田まほかるも苦手だったりして。

悪いうさぎ (文春文庫)若竹作品のほうは語り手が悪意ふくまず冷酷なまでにカラッとしてて、おかしな部分だけが浮き出る描写をする。主人公がクールすぎてこわいともいう。それでも、ジメジメしてないあたり私は若竹さんのほうが好きです。

それにしても、なんで若竹作品は『依頼人は死んだ』と『悪いうさぎ』しか電子化されてないんですか。東京創元社出身のマイナー作家だからですか! せめて葉村シリーズ1作目の『プレゼント』を電子化おねがいします中公新社さん。

そして若竹さん、葉村シリーズの新作まだー? 「あんたじゃ無理だ、邪魔だ引っ込んでろ、という言葉を、婉曲かつ丁寧に伝えるすべはないものかと考えた」(『悪いうさぎ』, Kindle位置No.708)みたいな葉村晶を私また見たいです(><) 『悪いうさぎ』ではすべての事件がつながってそうで全然つながってなく、単に不幸フルボッコなだけの葉村晶には笑った。若竹さんひどい。

追記 『宝石 ザ ミステリー3』に若竹作品ふたたびですが、文章のキレは「暗い越流」と比較していまいちか。:若竹七海「幸せの家」(『宝石 ザ ミステリー3』)感想?

2014/3/28 追記2
表題作をふくむ短編集『暗い越流』が単行本化。葉村晶シリーズの「蠅男」と「道楽者の金庫」が収録されました! 同時に光文社の若竹作品がKindle化です。みんなであの黒い世界を楽しみましょう。とくに「蠅男」は安心の葉村です。

2014/11/12 追記3
葉村シリーズでは13年ぶりの長編新作『さよならの手口』が刊行。文春ならKindle版が出るであろうと期待します。「相変わらずひどい目に合いまくる」というのが作者の言。なにそれよみたい。
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高殿円『トッカンvs勤労商工会』

トッカンvs勤労商工会 (ハヤカワ文庫JA)ドラマ化でちょっとだけ話題になったような気がするトッカンシリーズの2作目がはやくも文庫&電子書籍で登場。国税専門官のなかでも払ってもらう仕事つまりは取り立てをメインとする徴収官のおはなし。

前作にひきつづき、主人公は国税専門官しか公務員試験に受からなくていやいや国税に入ったぐー子。彼女のお供は怖い上司(「顔が怖いので、普通に強く言っただけでも恫喝されていると相手が感じることもあると思う」という主人公の弁に笑った)である鏡トッカン、ではあるのだけれど。今作はそんな鏡トッカンの出番が少ない。今作の評判がいまいちなのはそこなんだろうと思う。

前作の長所と短所は明らか。キャラクターが魅力的ではあったけど、文章が物足りなかったこと。一方で今作、文章力は前作よりもずっと上がってすいすい読める。しかし、キャラを見ていて楽しかったのはまちがいなく前作のほう。あちら立てればこちらが立たずでこまったもの。

私は前作の文章が大きな不満のひとつだったので、トッカン2ndのほうが好き。でも、1stが好きなひとに勧められるかというと、迷う。

文句なしに勧められるのは、1stの女の修羅場や家族の不和が楽しめたという方ですね。今作にも当然のようにあります。高殿さんのこれって、すごく作り物めいた軋轢のようには感じるのだけれど、微妙にリアルでこわい。親子の不仲は私も経験者だからよくわかる。あんな感じですよ。

ちなみに、作中で「公務員の安定」について好意的に語られてるとはいいがたいけど、家族関係が悪くて頼れる存在がないって人には重要になってくるもの。私はそれを求めた彼女を批判することはできない。そこについてもっと作品で語っていいと思うのです。

それと、今作では「法律で決まっていることなので」というのがキーワードになっているのですが、ここもっとその法律の裏をかく、もしくは法律のなかでうまく立ち回るストーリーをやらせていいと思う。有川浩あたりなら絶対やってる。

キャラクター描写は1stを見るかぎり問題ないし、文章も2ndで上達してるし、あとは2つを維持しながらストーリー構成がんばれってところかな。私はまだ読み続けますよ、トッカンシリーズ。

P.S
今作でいちばん好きなのは鏡さんにお電話して「とっとと用件を言え!」ってところで「鏡特官お元気ですか?」と聞いたところ。怖い彼に向かってよくやってくれた。だって私も気になってたもん。
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