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好みなんて、ひとそれぞれ

『今をトキめかない』さんより

先日の「ほんもの3Dテレビ」について、放送前の予告的な紹介(宣伝?)記事が、某ポータルサイトニューストピックに掲載され、実に多くのコメントが寄せられました。
思い出した!あの日の感動! :今をトキめかない

なるほど、こんなことがあったのですか。私は場の雰囲気を見てあれだったら即バック、その某ポータルサイトは見るまでもなく基本即バックなので知りませんでしたし、これから詳しく調べようとも思いませんが。

せっかくなので「作品の評価」について論じてみることにします。
結論から言って、ネット上の評価なんて、まったく当てになりません。

例を挙げましょう。SFで有名なウィリアム・ギブスン 『ニューロマンサー』とフィリップ・K・ディック『ヴァリス』 Amazonの評価を見ると、ものすごく評価高いです。でも、この2作は挫折率が非常に高いことでも有名なんです。

私も『ニューロマンサー』は本屋で覗いてみて無理そうなので止めましたし、『ヴァリス』は同じ神学的モチーフの短編「シビュラの目」が理解不能だったので読んでません。

他にも有名作なのに好きじゃない作品なんて私はいっぱいありますよ。『幼年期の終わり』とか『夏への扉』とか。『愛はさだめ、さだめは死』の一部収録作なんて「シビュラの目」とは違う意味で理解不能な領域なんですが。誰か日本語教えてくださいレベル。とにかく、世間の評価高くても私はおもしろくないんだからしょうがない。

逆に、私が好きで好きで関連作品はほとんど買って、参考資料として挙がっていた本を読みまくるほど大好きなRemember11というゲームの評価はこのとおり真っ二つで総合評価は微妙。

あと、私の大好きな映画ドラ 新魔界大冒険も評価は低いです。でも私は好きなんだからしょうがない。前作や旧作の評価が高い反動でこちらの評価が低くなろうが、私には関係ありません。

Amazonというのは、公平に見えて評価が偏りやすいです。誰だって高評価の中に低評価なんて入れづらいし、「このレビューが参考になった」で叩かれたら嫌です。

グレッグ・イーガン『祈りの海』で低評価付けているお二人のレビューとか、『祈りの海』が好きな立場の私すらすっごい同意できるのですが、「このレビューが参考になった」投票では微妙、と。まあこんなものです。

Amazonですらこうなんだから、どこかの巨大掲示板とかポータルサイトの話題が一度偏ったらどうなるかなんてわかりますよね?


そもそも、

『ライトノベル作法研究所』さんより

人気投票で上位に入った作品と、不人気投票で上位に入った作品が被ることが多かったのです。
オリジナリティ論:ライトノベル作法研究所

あなたの作品を10人の人が読んだら、賞賛してくれる人が1人、批判する人が1人、残りの8人が、無言のまま去っていきます。
価値観の違う読者からの酷評にどう対応する?:ライトノベル作法研究所

と、小説研究サイトにもあるように、10%のアンチがいれば必ず10%のファンがいます。10%のファンは単に雰囲気にのまれて書きこまないだけです。

というかドラえもんは国民的アニメだからいろいろな方が見ているわけで、10人、とはいかなくても100人くらいに声かければ1人くらいはわさドラが好きな方がいらっしゃると思いませんか。日本の人口1億2000万人ですから、120万人くらいいる計算になります。それじゃ不満ですか? 私はこれくらいいれば満足です。


つまり、ネットの評判なんて気にする必要ありません。好きなようにやればいいのです。しかし、これは逆にファンがファンの評価を気にする必要もないということで。

鈴忌さんの意見
仮に10%の人間に認められる作品を作れば歴史に名を残せます
人気作品をおもしろいと感じないのは感性が乏しいから?:ライトノベル作法研究所


という意見に私は同意します。つまり、ファンは最大で10%以下ということです。上でも引用したように、ファン1人に対して9人は興味なし、嫌い、なんです。

いくら日本人がドラえもんを知っていても、ドラえもんの原作読んでいるひとなんてそういるわけない。それなのに勝手に「ドラえもんの原作読まれていないなんて失望した」みたいなことを言うのは私は9割の方々に失礼だと思います。

私だって名作や古典と言われるものでも、興味なくて読んでいない作品はいくらでもあります。一生かかっても読めるのは1%以下でしょう。私がこの前言った持ち込みたくない「常識」とはこのことです。


まとめると、あるひとが好きもしくは嫌いと思う気持ちを否定するのは誰にもできない。特に、「この作品が好きなんだ!」という気持ちはあなたの財産ですから、たとえヘンな人がいて否定されたとしても自信持ってください。私は自信持ってます。私は未だにアンチが目立つわさドラ&Remember11と、そもそも名前すら知られていないMy Merry May が大好きです。

……決めました。やっぱり本音出します。アンチに悩むとか、どれだけ贅沢なんですか。日本人のほとんどがなんらかの形で「ドラえもん」を知っているということ自体が既に奇跡の賜物なんですよ。

売れないことがわかっていて、それでもライターが創りたいと思うゲームを創らせた。その結果がもしかしたら会社の倒産なのかもしれない、という My Merry May ファンの私の気持ちはいったいどこに投げつければいいんですか?


あ、最後に。春巻きさんへ。
「リニューアル当時感想を書いていた方、そして今書いている方、ありがとう」

私も含む、のでしょうか? そう解釈します。
どういたしまして。こちらこそ、ありがとう。


自分の好きなものに自信持てない、という方はこちらを。
恋空やセカチューで泣ける人ほど優れている:誰が得するんだよこの書評
「好き」を表明することは、大体どんなときでも大事だと思うこと:不倒城

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)
しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)
←おすすめ本
アイデンティティを探求しつづけるグレッグ・イーガンの短編集。表題作「しあわせの理由」を読めばわかります。好き嫌いの組み合わせがヒトのアイデンティティを規定することを。そして、好き嫌いが皆同じになったら、どんなに恐ろしいかということを。

14年。それから

本日9/23は藤子・F・不二雄先生の命日です。今年で14年になります。

ということで今日はF先生が亡くなった当時の誤解を解こうと思います。
ストレートに言います。「F先生が鉛筆を握ったまま机に突っ伏して気を失っていた」というのは嘘です。

証拠は、小学館2000年発行『ドラえ本 ドラえもんグッズ大図鑑3』に掲載されているF先生のご息女、日子さんのインタビューです。引用します。

日子 「鉛筆を持って机の上に伏していたとマスコミに報道されました。(中略) でも、本当は静かな、まるで庭を眺めているようにして椅子の上で意識を失っていました」(p182)

『こだわり人物伝 藤子・F・不二雄』のテキストでは夫人の正子さんが「机に向かいペンを握ったまま倒れていたのを日子が見つけて」(p56)とおっしゃっていますが、おそらく間違いだと思われます。


これだけで終わらせるのはなんなので、この機会に私が「ファン」としていろいろと感じていることを書こうと思います。

正直に言って、私は狭いファン活動が嫌いなんですよ。どこかで見たような話しかないから。
だから、藤子ファンが藤子F先生凄いんだぜ! と長々と語っているのを見ても全然心に来ないことが結構ある。(某会誌の投稿欄とか読んでない……) それよりも、他分野のファンがさらりとF作品を引き合いに出してF凄いねというのを見るほうが感動します。語る視点自体も藤子ファンとはズレていて、私にはまったく気づかないようなことが多い。

藤子だけでなく多くの分野に目を向けていかないと、藤子ファン以外からの支持を得ることはできない。特定のファンだけに支持されるものを書いたところで、一般の方々からすると明らかにズレていることだってある。そういう「常識」を他分野に持っていきたくない。そうならないためには、やっぱり「いろいろ」な作品に触れて、それらの作品もリスペクトするしかないのかなと思ってます。

そういえば、私が最高のリスペクトを捧げている物語、My Merry May をプレイしたのは同社のゲームEver17ファンの誰かが薦めていたからだったのを思い出しました。Ever17自体はまあ普通に好き、レベルなのですが、マイメリへの糸口をくれたという意味ではいくら感謝してもしきれない。こういう横とのつながりを大事にしていきたい。(しかし、薦めてくれた方には悪いけどマイメリとEver17は別に似ていないと思う)

まあ、そう簡単にできたら苦労はしないんですが。とにかく、多くの作品を読んでみる。そして逆に、私がファンである藤子F、それだけでなく My Merry May、フィリップ・K・ディック、その他あれこれに対して皆さんが興味を持ってもらえるように記事を書いていきたいと思ってます。


ということで、3日前にドラ&マイメリ関係でひとつ重要なことに気が付いたので叫ぶ。
マイメリの原画を担当されている「をがわいちろを」さんってもしかしてドラ誕生日スペシャルの作監のひと!? 作監担当パートなんて知らないけどもっと褒めておくべきだった。

ドラえもん ほんもの3Dテレビ/その日、すべてがネズミに!

2010/9/17 わさドラ ほんもの3Dテレビ/その日、すべてがネズミに! の感想です。

なんかよくわからないけど今日のドラはおもしろすぎるぞ!

ほんもの3Dテレビ(アニメオリジナル)
脚本 小林英造/絵コンテ・演出 八鍬新之介/作画監督 久保園誠


どう考えてもこんな道具あったらテレビ放送が成立しません。オチのように危険なことになる可能性も大なんですが。未来の世界ではちゃんとガードかかってるんだよね。でも、これ上手く使えば視聴者参加の番組に利用できる。視聴者の皆さんに抽選で今すぐドラ焼きプレゼント! とか。それはそれで楽しそう。

のび太の家はまだ地上デジタルじゃないのか。まあ当然だな。でも、一年後には液晶テレビになってるのかなあ。それじゃここんとこをやく60度の(略 できないね。ちなみにテレビは精密機器なので調子が悪くなったからといって叩かないように。

3Dテレビの話題を出すならあたしんち3D劇場版の宣伝すれば良かったのに。ということで私が宣伝する。→公式サイト http://3d-atashi.jp/

有名人らしきひとがやたら出てたけどDVD収録されるのかいまから心配。一過性のネタはあとから見てわからなくなる可能性が高いので、個人的にはあまり歓迎しないところがあります。(「海賊大決戦」のジョニー・デップ……)

あ。それを言ったら地上デジタルもそうか。まあF先生も伊藤翼とかやってるしいいかという気もしないでもない。「Yロウ」「辞ニンジン」のように知らなくても普通に流せるくらいのものならまったく問題ないのですが。

本の訳語に流行語は使わないと言っていたのは深町眞理子先生だったかな。(他にもいたような気がする) 訳したときはバシッと決まった! と思っても何年か後に読むと恥ずかしくなるんだとか。中村訳『結晶世界』で「土民」みたいな、いかにも古い訳語がばんばん出てきたのを見てうわーと思った記憶が蘇る……。

アニメは本よりも一過性なものなので、無理に当てはめる必要はもちろんないんですけど、こういう話があるよってことで紹介でした。


で、肝心の内容については
・チルチル含めて三人用 ←今日の演出安藤さんかと思った
・来週からは迷犬ロッキーがスタート
・しばらくお待ちください
・冷静にテレビの中へ戻っていくボクサー

などなど、シーンごとにツボがあって、きちんとそれがはまっているというのは結構凄いことではないかな。どれも妙な勢いがあって楽しかったです。


その日、すべてがネズミに!(アニメオリジナル)
脚本 清水東/絵コンテ 木村哲/演出 松村樹里亜/作画監督 三輪修/作画監督補佐 高野登


これはフィリップ・K・ディックファンの私歓喜。ディック「この卑しい地上に」のコメディVer.ではないか。(実際参考にしてるかどうかはわかりません) 悪夢だ。これは悪夢すぎる。ディックワールドの悪夢は藤子Fの夢と対であり、かつ同一であると思っています。だからこそ、ドラでこのように悪夢世界を描写しても普通に通る。

願わくは次はホラーテイストにならんことを。のび太にひげが生えるあたりは演出変えれば完全にホラーになる。ラストのママもかなり恐ろしかった。(そもそも後ろ向いたママってなんか怖くない?) いけるよ木村さん!

ということで約一年ぶりに木村哲さんきたー! 「世界をぬりかえよう」「アドベン茶」が大好きなのですよ。 調べてみると、木村さん担当の「世界をぬりかえよう」「野比家が巨大迷路に!?」は両方とも不条理世界の話か……。もしかして、そっち系得意?

・世界のチーズフェアが開催チュー
なんかネズミ三石さんの声がいつもより微妙に高いような気がするんですが……。わざとだよね? わざとだよね!? これは凄い。あと、チーズ争奪戦で流れているチューチューというガヤも何気に頑張ってる。今日は声優の皆さんと音響監督さんお疲れさまでした。

・のび太くん、待ってろー!!!
タ、タケコプター演出がかっこいい……。

これまたヘンな勢いがある話でおもしろかったです。いやーこういう固定された世界がバラバラに分解されていく話は好きなんですよ。


えかきうた
今日はピザ。うむむ……だんだん普通に戻っているのがさびしいというかなんというか。


来週からお休みの時期に入って、次回10/15の放送は「迷宮お菓子ランド」です。
お菓子の家を食べるのは子どもの頃の夢だよね!

私もこれからいろいろ忙しくなってくるのでドラ感想の更新遅れます。(少なくとも当日金曜には無理です) ドラ感想以外の更新も少なくなるかもしれません。そういうことでよろしくおねがいします。

Erde ~ネズの樹の下で~

My Merry May担当のQ'tron長井・西川コンビがMayとMaybeの間に出した、まったくもって話題にならない作品。出来もいいわけではないのでやらなくてもいいと思うのですが、マイメリ西川節を堪能したいならエナだけはおすすめ。

とりあえずおすすめ攻略順。ネタバレなしですが、ちょっと設定解説はします。ネタバレ感想はこちらで。→Erde ~ネズの樹の下で~ ネタバレ感想

攻略順の前に。初期設定ではゲーム中のテキストが見づらいと思うので、L3(左スティック)ボタンでウィンドウを変えるのを忘れないでください。

では。全員プレイするなら
アヤ→ヨーコ→リオウ→エナ→ケイ

時間がない場合。全員やっても20時間くらいで終わりますけどね。

マイメリファンならエナ。

エナをやって謎が気になった方はケイを。残念ながらケイでわかる以上の謎は明らかにはなりませんので、飽きたらそこでやめても大丈夫です。

Q'tronエンドが好きならリオウ・エナ・ケイ。
全員Q'tronエンドではありますが、この3人が強いです。正直、リオウは終盤入るまでつまらない。しかし、Q'tron好きならラストのためにやる価値はあり。

鳥好きならヨーコ。

アヤはどうでもいいや。(アヤ好きな方すみません……)


でも、最初にエナをプレイすると設定がわからないと思います。やたら設定がわかりづらくできているので、タウンについて解説します。

タウン(学校とか噴水がある世界)は仮想現実です。いわゆる.hackの世界。家にある端末につないで、ネットゲームの世界に入る、みたいな感じです。タウンの世界では、噴水に行こう、と思って手近なドアを開ければ、すぐに噴水に行け(つながり)ます。でも、路地を通って噴水に行こう、ということを主人公はなんとなくやってます。

現実世界ではときどき「隊商」という商人がやってきて、ここで買い物をします。タウンでほしいものを隊商に注文しておくと、現実で隊商が来たとき受け取ることができます。(ネットで商品を頼んでコンビニで受け取るのに近い)

後者の設定、2人だか3人クリアしたときに私ようやくわかったんですけど。(アヤ→リオウ→ヨーコ→ケイ→エナでクリアしました) では、次回はネタバレ感想を。

攻略サイト Erde ~ネズの樹の下で~ :ぐるぐる☆ちょっぷ

工画堂新作『白衣性恋愛症候群』のブログで西川さんがさりげなく出てます。シナリオには携わっていないようなのが残念ですが、ゲームは結構おもしろそうなのでやりたい。が、最近忙しいので無理そうだ。工画堂さんごめん。
公式サイト http://www.kogado.com/html/shimarisu/shirokoi/

売れないであろうギャルゲー(notエロゲー)を創り続ける工画堂は偉い。同じく、絶対売れるとは思えない My Merry Maybe の制作を許したKIDはまさに神。しかし、その神は死んだ……。工画堂がKIDと同じ道をたどりませんように。

タグ: Qtron

ドラえもん ワの字で空を行く/変身! ドラキュラセット

2010/9/10 わさドラ ワの字で空を行く/変身! ドラキュラセット の感想です。

ワの字で空を行く(原作:34巻)
脚本 清水東/絵コンテ・演出 三宅綱太郎/作画監督 鈴木まりあ


もう発想がすばらしい。どうやったらこんなアイディア思いつくのか。速すぎてつかめない描写とか、こだまを使うとか、音の特性を最大限に生かしていてリアル。

しかし、実際に音速であんなにでかいものが飛んできたら軽傷では済まないような。音速で飛んでくるものをつかんで体勢立て直して、「ワ」のなめらかなカーブ部分に乗って……。危険すぎ。のび太の運動神経は結構良いのではなかろうか。

今日はやたらアップのしずかちゃんかわいいな、と思ったらしずか誕生日スペシャルの鈴木さんが作監だった。しずかちゃん描くの得意なのかな。前はスペシャルで原画なんかにも気合入っていたからかわいいんだろうと思っていたんだけど、通常回でもかわいいとなると。いいひとを見つけた予感。(→しずかちゃんとおじいの木 感想

・どうしたらねぼうしてもちこくしないですむか、ちこくしてもしかられない方法は
原作では「『どうしたらねぼうしないか』とは、ゆめにも考えない」という誰ともないツッコミが入ってました。でも、ここは視聴者がツッコむのが王道だと思うので、無くなってて良かった。

・ただのタケトンボじゃないか!
2階から落ちるのは危険でしょ。止めろよ! ドラ鬼畜。

・ヤッホー! こだまがあちこちぶつかってる
やっぱりどう見ても危ないです。くしゃみも制御不能になるし。

・ドラエモン、タスケテ
綺麗に落ちてるなー。ケテスタになって助けを呼ぶのに失敗したりはしなかったようだ。

オチが変わってたけど、アニメならこのオチのほうが視覚的に楽しい。今晩はずいぶん派手にやってるなあ、と笑顔で帰ってくるパパもほほえましく感じられます。でも、原作のループオチもおもしろいので興味あったら見てね。


変身! ドラキュラセット(原作:21巻 ドラキュラセット)
脚本 相内美生/絵コンテ 鈴木孝義/演出 三宅綱太郎/作画監督 鈴木まりあ


忘れることができる道具欲しいです。ネタバレを見てしまったときに使える! もっとも、そんな道具発明されたら実際問題として嫌だけど。悪用されたらどうする! というかのび太はすでにしている。

記憶の連鎖は自分が自分でいるために重要。この前読んだ『航路』のアルツハイマー病の描写は本当に怖かった。記憶自体も死んでいくし、記憶が飛び飛びになって思考も難しくなっていくし。(しかも周囲のひとの生活まで壊れていった)

精密な脳に操作を加えるなんてそんな道具いらん。あらすじを知っているせいで楽しめない作品はそもそも駄作であると、ネタバレを見てしまったときは考えることにしよう。

ドラの未来の世界って人間が全然変わってなくておかしい。人間のアイデンティティを問う道具がやたら出ているんだから、現代人からは一線超えた思考していても良いはず。

そもそも「心」のあるロボットを量産した後の世界が変わらず人間社会になっているかどうかは個人的に疑問。ロボットが創造的行為をするようになったら人間どうなる? という。いまドラえもんを創る技術があったとしても、人類には倫理・精神的な問題扱えないと思うよ。まだ。

というのを本当は前回の感想で書きたかったのだけど、感動がぶち壊しになったと抗議されそうな気がしたからやめた。一週間経って落ち着いた方も多いだろうからいま書く。

(そもそも、ロボットの心って何だ? な方はこちらを。コメント欄で藤子Fとディックが比較されていて嬉しい。一見正反対だけど、このふたりものすごく似てる。
はたしてドラえもんに「心」はあるのか:空気を読まない中杜カズサ

話を戻して。そもそも何で記憶を吸い取るのにドラキュラなんでしょう? 調べてみても特にドラキュラにそういう話は無いようですが。単にあのオチをやりたかっただけなのか?

「吸い取る」のが重要なら掃除機でもいいじゃない。掃除機好きな私としてはそっちのほうが良い、というよりシュールかも。掃除機抱えて夜の町を走る、想像してみると笑える。いっそドライブは掃除機に乗って。

・こんな夜中になにさわいでるの
ママがカーラーを使っている! こういう細かいところで生活感を感じさせていて感心。

・こんなバッチイやつに吸いつけるか!
わざわざ洗ってあげるのび太に吹いた。普通そこまでするか。ジャイアンも起きろよ!

・おかえり、ドラちゃん。お部屋、ずいぶんちらかってますね
ドラ焼きの袋を持ったドラを見てなんか町内突破大作戦のデジャブを感じた。直後、本当に町内突破大作戦と同じ展開になって笑った。大作戦のカット使いまわしてもたぶん違和感ないレベル。コンテが同じ鈴木さんだからかな。でも、怖さは町内突破大作戦のほうが上だった。ぜひまたあれくらい怖い演出考えてください!(→町内突破大作戦 感想


えかきうた
今日はおべんとうにえかきうた。地味に好きですこういう芸術。子どもに持たせたら周りからうらやましがられる予感。ほっともっとさんドラえもんフェアといいGJです。


来週9/17の放送は「ほんもの3Dテレビ」「その日、すべてがネズミに!」です。
周りの人物が変わっていく……。なんというディック的悪夢世界。

コニー・ウィリス『航路』

航路(上) (ハヤカワ文庫SF)この作品は小説の中の小説です。ストーリーも素晴らしいんですが、それ以上に伏線やメタファーを余すところなくぶちこんで物語を重層化させているのが凄い。ここまで技巧に凝った小説は初めて読んだ。これプロット・構成の段階で相当計算してる。作者は本当に小説の天才。

臨死体験を研究するジョアンナ。彼女は同分野の研究者リチャードと組み、臨死体験の際と同じ幻覚を見るという薬を使って、臨死体験を科学的に解き明かそうとする。しかしそれを妨害するためにつきまとってくるインチキ研究者と被験者としてもぐりこんでくるその信者たち。ストーカーな彼らを相手するのがめんどくさくなったジョアンナは自らが被験者になることを決意する。臨死体験という航路の先にあるものは…?

『航路』 別名『ジョアンナの受難物語』

で大筋は間違ってないはず。たぶん。


感動した! という感想が多いですが、私はあえてこちらを強調します。これは超高度なコメディ小説です。この小説に登場する方々のほとんどは、非常にうざいです。前述した疑似科学を信仰するインチキ研究者と信者は、主人公を見つけてはトンデモ話をします。(山本弘ファンはアポロ11号は月に降り立ってない! と何回も言う人でも想像してください)

うざいのはこの2人だけではありません。被験者の一人はジョアンナの質問に答えず戦争の話ばっかりするわ、疑似科学を信じない少女のメイジーはジョアンナの味方だが、忙しいジョアンナを引き留める名人でもあるわ。ほかのキャラも何かしら問題抱えています。

しかもこの方々グッドタイミングで現れるのでジョアンナの予定が狂うことはしばしば。さらには迷路のように入り組み、行けども行けども目的の人物に会えない病院。あげくの果てにジョアンナが食事を取りに行こうとしてもカフェテリアが開いていることがありません。カフェテリアまで敵です。読んでいてジョアンナさんがかわいそうになりました。


ここまで普通描くか! というくらいうざい描写がやたら多い。ここに感情移入できるかどうかがこの作品を受け入れられるかのポイントでしょう。わざわざ描写を入れている意味はちゃんとあって、物語後半にそれはわかります。

ただ、冗長すぎてついていけないという方に、盛り上がる残り300ページくらいまで我慢して読めとは言えません。合わなかった方は適当に切り上げるのが吉。

私は大いに笑わせていただきました。だってタイミングがバッチリすぎるのもおもしろいんだけど、ジョアンナの冴えわたるツッコミがこれまた楽しいんだもん。

ウィリスの文章と大森さんの翻訳が非常に読みやすいのも高ポイント。途中まで翻訳小説であること完全に忘れてました。これはコメディで定評がある『犬は勘定に入れません』も読まなきゃならないな。

ツッコミを2つ抜粋してみる。

(メイジーの病室の前を通る際、メイジーがジョアンナに気が付かないことを祈るが)

もしかしたらビデオを見ていて気がつかないかも。
そうは問屋がおろさなかった。
「ジョアンナ!」戸口の前にさしかかった瞬間にメイジーがそう叫んだ
(ヴィレッジブックス文庫版, 上巻p572)


(インチキ研究者と鉢合わせ、場を離れる言い訳を考えるが)

ミスター・マンドレイクのことだ。「話はほんの数分で済む」というだけだろう。
「話はほんの数分で済む」とミスター・マンドレイクはいった。
(ヴィレッジブックス上巻p580)

文章のリズムが良く、非常に笑えます。こういう文章がいたるところにあるので是非是非読んでみてください。


しかし、笑えるのは2部の前半くらいまで。2部後半からは死の色が濃くなり、深刻な物語になっていきます。そして、衝撃の2部ラスト。ここまでたどり着いた方、先が気になるのはわかります。しかし、まずはここで一息。お茶でもどうぞ。夜遅いなら寝たほうがいいです。休んだあと、第3部残り300ページ、ノンストップで<向こう側>まで行きましょう!

訳者あとがきより。(『航路』訳者あとがき:nozomi Ohmori SF page

SF翻訳家の山岸真氏から、《本の雑誌》の先取り書評コラム用に原稿を読ませてほしいという依頼があり、第二部まで仕上がっていた訳稿をメールで送ったんですが、二日後に電話してきた山岸氏いわく、
「ここまでしか読めないのは拷問だから一刻もはやくつづきをメールしてくれ!」

うん、第2部まで送るというのは最低な行為だと思います大森さん。


登場人物MVPはメイジー一択。もはや笑えなくなった第3部でも笑わせてくれた貴重な人材。もちろんコメディだけでなく、何重にも積み上げられた第3部の物語すべてを引き受ける重要人物でもあります。

「晴れ晴れとした笑みを浮かべ、『わかってたもん、(中略)』とうれしそうにいった。『わかってたもん』」
(ヴィレッジブックス下巻p436)

というシーンはちょっとグッときた。あまり感動というものができない私にはこれだけでも結構めずらしいのだ。たったひとつの冴えたやりかた? なにそれおいしいの。(別に嫌いなわけじゃないので誤解なきよう。全然泣けなかっただけです)


ティプトリーJr.「最後の午後に」、ウィリス『航路(上)』、田沼靖一 『ヒトはどうして死ぬのか』をはさんで『航路(下)』と読んだ。次に森絵都『カラフル』にいく予定だったんだけど、いくらなんでもハードすぎる気がしてきた。死ばっかりじゃないか。少し休むか……。(映画『カラフル』見に行けそうにないのが残念)

一人の人間という個を生かすために、アポトーシスを起こして細胞は死ぬ。
人間という種を生かすために、個の人間は死んでいく。
では、人間という種がいなくなったその先は? その向こう側は…?

個としての人間の向こう側は死ねばわかるのかもしれないけど、それ以上の宇宙の循環みたいなのはわかんないんだろうなあ。なんか悔しい。

タグ: 本・SF

ドラえもん 決戦! ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット

2010/9/3 わさドラ 決戦! ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット の感想です。

決戦! ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット(アニメオリジナル)
脚本 水野宗徳/絵コンテ 大杉宜弘/演出 大杉宜弘・八鍬新之介/作画監督 三輪修・吉田誠・をがわいちろを


おお、ツッコミどころがものすごく多いけど、綺麗にまとまっているではないですか! 最初から最後まで飽きずに見ることができました。MVPはワンダフル。コミカルなところはコミカルに、シリアスなところはシリアスに。ポイントを押さえた見事な活躍です。

しかし、人間の嫌な部分を垣間見てしまったのもまた事実。たとえば、一方的な情報を鵜呑みにする管理協会の偉い人や、明らかに偏ったテレビ番組を信じるご家庭とかね。そんな人間たちに振り回されるのは結局ロボット。ネコ型ロボットもイヌ型ロボットも子どもたちを健やかに育てたいだけなのに。

被害者はもうひとり。もちろん子どもたちです。大事なともだちを奪われるなんて間違いなくトラウマになる。見ていて「あんたら子どもたちが受けるショックわかってるの!!!?」と管理協会に対して怒り心頭になりました。

でも、悲しいことにこういうのはアニメの世界に限ったことではないんですね。大人の勝手な都合で教育に良いから使うとか悪いから使わないとか、現実世界にもあります。そういうのってなんか根本的なところから間違っているような気がしてならないんですよ、私は。

科学技術の発展によって社会はどんどん変わっているのに、人間はその変化についていけてない。変容していくこれからの世界でどう生きていくか。少し考えさせられました。

でもだからこそ、最後の暴動ですべてが救われた気分になった。子どもだけでなく大人たちもきちんと文句言ってた。ネコ型ロボットだけでなくイヌ型ロボットも救われた。うん、これは名作。

絵コンテは以前「しかしユーレイはでた!」(2008/8/1)の演出・作監を担当した大杉宜弘さん。演出と作監兼任なんてめずらしいなーとなんとなくお名前を覚えていたのですが、まさかの復活。一番最初のネコvsイヌのカットから、これは今日はいけると確信しました。期待通り。さすがです。

今回はおもしろいと思った演出が多かったので箇条書きにします。
・未来の世界で空中に浮かんでるスクリーン(?)がまさに未来って感じがして好き
・のびドラが家に帰ってきたときの動きを省略したカット(テンポ良くて上手い)
・のび太の部屋でバショー扇を使ったときの中と外、静と動の演出
・ゴンスケ
・しゃべる代わりにタイトル文字っぽいものが落ちてくる演出(やりすぎ感がなくはないけど、結構気に入った)
・ネズミー!!!
・バショー扇2回目←かっこよすぎ!

一番のお気に入りはやはりネズミ。作画気合入りすぎてて大爆笑。こんな絵いままであったっけ。

では、その他のポイントを。

・ネコ型ロボット
いくら誕生日とはいえ街中ドラと同じネコ型ロボットだらけなんですが……お世話ロボットってマツシバ社独占なの? 独占だったら人間の安全にかかわるバグが発見されたときかなりまずいのではなかろうか。でも、「ドラえもんの青い涙」では明らかにドラとは違う型のネコ型ロボットがいるんですがそのへんどうなった!? マツシバ社のお膝元だからあの型がはやっているとでも脳内補完しよう。

・マタタビ弾
良いネーミングセンスだ。

・ペタリハンド、石頭
全然道具じゃないじゃんと笑わせる一発ネタだと思いきや伏線。凄い!
しかし、私ドラの石頭設定好きじゃないんですよ。堅かったら抱きつきたくないので。あんなコンコンと音するなんて嫌だー! 私のイメージはゴムボールです。新魔界のやわらかドラちゃんはちょっとやりすぎだと思うけどあれはあれで好き。

そもそも、石頭設定ってF先生が描いたもので雲の王国以外にあったっけ? しかも、石頭でガスタンク壊すところはアニメスタッフが考えたのをF先生が逆輸入したはずなんですが……。(ラスト2話はF先生の入院により絵物語になっていた。その話には石頭で勝利するところはない)

石頭の出ている話が他にもある! という方は教えていただけるとうれしいです。ギャグとか演出っぽいところは抜きで。

・(管理協会の入口を突破する際)みんなごめんね!
さりげなくのび太の優しさが出ている良いセリフ。

・ヘイキン君、70点。のび太君、2点
そのあと、神童があらわれてイヌ型ロボットの凄さをアピールするんですね。わかります。
……サンプルがのび太一人だけってやっぱりどうなのよ。これはたまたまだよ! というのび太の主張はもっともすぎる。

・これを見るがいい
ちゃんと夏休みの宿題を終わらせている! 0点とはいえ偉いぞのび太!
絵日記か。前に絵というのはひとの心を表すと書いたけど、再び登場。パパと違って絵はそれほど上手いわけではないんだけど、それでも伝わってくるよ。のび太の気持ち。


えかきうた
今日はみんなでドラえもん。これがえかきうたの本質。


来年にのび太の入学式エピソードをやるようで、入学式の思い出話を募集しています。おもしろそうなので協力できそうな方は公式サイトまで! ちなみに私は全然覚えておりません。

今日の感想はここまで。ドラえもん&渡辺歩監督誕生日おめでとうございます! 渡辺さんはもはやあまりうれしくないだろうか。しかし、意外と渡辺さんもお若いのね。あと10年、20年はいける。


来週9/10の放送は「ワの字で空を行く」「変身! ドラキュラセット」です。
誰が掃除するんでしょうかあのワの字。勝手に消えるのか。

続・鉄人兵団のオチは反則

しつこいかもしれませんが鉄人兵団論再び。あのオチはやっぱりいけません。前回に言ったこととたいした違いはありませんが、若干視点を変えていきます。前回の記事はこちら:鉄人兵団のオチは反則

タイムマシンというのはすべてを無かったことにする解決法。ならばのびしずとリルルの友情や鉄人兵団を相手に戦った5人の結束なども当然無かったことになる。(本来なら5人に鉄人兵団の記憶は無いはず) それ悲惨すぎませんか?

現実世界と同等に、物語の中で紡がれる世界や人間にも独立した価値があり、読み手もその影響を受ける。それを歴史改変で無かったことにできるというのは物語の意味自体が失われることになります。

たとえ天国みたいなメカトピアが生まれても、再び歴史改変によって壊される危うさを持った世界となる。物語自体の価値も消滅し、「単なる架空の物語」でしかなくなる。こういうメタ的な手法はあまりすべきでないと私は思います。

(ちなみにメタを物語の構造そのものに導入することによって世界の虚構性を描く作品もあります。しかし作品名出した時点でネタバレになるので出せません。叙述系の作品はつらい……)

そういえば映画本編の中で「この映画を見ている人以外は信じてくれないよ」というセリフがありましたけど、これはいらない。私は醒めました。

大山ドラってたまにメタが……「浦島太郎のなぞに挑戦」のラストとか。このあたりは賛否分かれるところでしょうか。私はメタ嫌いなので好きではありません。

今回は時間軸一本で考えましたけど、パラレルワールドで考えても似たようことになると思います。グレッグ・イーガンや神林長平など、無数のパラレルワールドがあるなかで自分の存在意義は何か? を考える作品は現実に存在するので。

時間がメインギミックの話や、パラレルワールド前提のノベルゲームとかなら読者の了解がありますが、鉄人兵団のようにほとんど伏線無くこのような大オチはいくらなんでもまずいでしょう。

とここまで書いておいてなんですが、世の中なんでも正攻法で解決するわけではないし、5人がリルルのことを完全に忘れる切ないオチなら個人的にはOKかな? という気も。SF短編の「影男」がそんな感じだった。リルルに救い無いけど、それは時間改変の重大性を観客に伝える代償ということで。

それでもなんとか救いを出そうとするのなら、観客だけにわかるようにチラッとリルルを映すとか、「のび太を愛した美少女」の青い鳥のようにメタファーを使うなんて手も。

おお、タイムマシンオチでも結構いけるんじゃない? やらないにこしたことはないけど。とにかく、時間改変とはどういうことなのかという問題提起がされてれば(=少なくとも5人の記憶が無くなれば)タイムマシンオチでも私はまあ構わないかな。原作はきれいすぎ。

しかし、ロボットに「あたたかい心」を植え付けるという解決法もまたイマイチなのが問題か。無理が多すぎる。やっぱり根本的にオチ変えたほうが絶対楽。

大長編のロボット物語は鉄人兵団・ブリキの迷宮・ロボット王国の3作があるけど、どれもロボットSFとしては微妙なんだよなあ。

ドラえもんにおけるロボット系物語というのは、まずロボットもしくは人間側を詳しく描写して、どちらかを論理的に追い詰めていかないと上手くいかない。なぜならドラえもんはロボットがいることが前提の物語で「ロボットは人間の友達だ」なんて当たり前のことだから。

単にロボットor人間を敵視する敵が出てくる→ロボットと人間は友達だ!→敵倒す だけだとあまりおもしろくないでしょ? それなら別にロボット出す必要ないし。極端なことを言えば、クラスになじめない転校生の話でも成り立つ。

「ロボットは人間の友達」という前提を一旦解体してからロボットと人間の関係を再構築していくのがドラえもんでロボットをギミックとする話の正しいやり方であり、SFの醍醐味。これはロボット・異文化コミュニケーション系SF読んでないとできないし、読んでいても難しい。

つまり、ドラでロボットものは自ら地雷踏む行為だと思うのですがどうでしょう。F先生も描けているとは言いがたい。というか描けてない。

ということでドラ誕生日スペシャル大丈夫なの? いやハードSF面なんて全然期待してなんていないんだけど。でもせっかくなら完成度が高い話が見たいじゃないですか。

追記:誕生日スペシャル名作でした。ごめんなさい。「決戦! ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット」感想

本を2冊紹介しておく。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)現代SFの頂点、グレッグ・イーガンの短編集。「無限の暗殺者」がパラレルワールドとアイデンティティを扱った話です。ただし、この短編集の中でおそらく一番難解。精神的に余裕があるときに。

そもそもイーガン自体、疲れているときに読んではいけません。短編一作でエネルギー使い果たす勢いだから。

アイの物語 (角川文庫)
アイの物語 (角川文庫)物語の「独立性」を強調してフィクションの素晴らしさを説く山本弘の連作短編集。いい意味で鉄人兵団のアンチ的な要素も入っています。ロボットと人間の関係を探るうえで必読もの。

そういえば、最初の話が小説の中の小説の中の小説とメタメタメタ。最初、かなり混乱した。

あれ。山本先生、藤子全集の21エモンの解説書いてたんだ。地球人と価値観が違う宇宙人を描いていてすばらしいというのはそのとおりだなあ。「アメリカSFの宇宙人は人間と戦うか仲良くなるかの2択しかなくてけしからん。本当に『未知のもの』はそういう問題ではないだろう!」と言ったのはポーランドのスタニスワフ・レムだったか。

日本でのレムの紹介はアメリカよりも早かった(日本:60年頃・米:70年頃)から、21エモンが描かれた1968年当時「異文化コミュニケーションの難しさ」を描くSFは日本のほうが進んでいたのかもしれないな。すごいよ! 21エモン世界最先端SFだよ! とむりやり褒めてみる。

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)読みやすく21エモンよりリアルな異文化コミュ話をご覧になりたい方は有川浩『空の中』がバッチリ→『空の中』感想 

『空の中』なんて全然リアルじゃないぜ! と満足できないハードな方はレム系統のR.C.ウィルスン『時間封鎖』がいいかも。リアルさを求めるとレム系宇宙人しかなくなりそうだから難しい。

もっとも、有川さんが「レムによると全く違った進化をした知的生物どうしは互いを理解できない!→わかってるよそんなの。でも相互理解が不可能なら人間的思考に当てはめるしかないじゃない!」(文庫版『空の中』p446を私が勝手に解釈した)というひとことでテキトーに済ませているのを読んで私は有川さんに惚れたけど。明らかにこのひとわかった上でやってる。

なんか山本さんのせいで4冊紹介してしまった。全部名作だからいいか。山本さんはブログでエスパー魔美についても熱く語っているのでこちらもお見逃しなく。
『エスパー魔美』を最初から読んでます:山本弘のSF秘密基地BLOG

あ、それほど薦められる作品ではないんですが、先日出た『アリスへの決別』が微妙に魔美っぽかったです。→『アリスへの決別』 感想

次の『少年SF短編1』解説の大森望さんにも期待。

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