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羽根田治『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)いつのまにか『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』が文庫化していたんだ! そういえばあのツアー会社どうなったんだろう、と検索してみたら現在進行形でまたやらかしていてなんかもはや笑うしかなかった……。しかも同パターン遭難じゃねーかよ!

北海道の夏山で8人亡くなったトムラウシ山遭難事故。この事故が起こった2009年7月ごろ、Remember11の考察ネタを拾うために山岳系の小説やノンフィクションを大量に読みあさっていたのがなにを隠そうこのわたし。

ドキュメント気象遭難しかもちゃんと読んでいたんですよ。『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』をメインで書いている羽根田氏執筆の『気象遭難』 この本の内容も、はっきりおぼえていました。2002年、トムラウシ山で遭難があり、低体温症で亡くなった方がいることを。

この本を読んだすぐ後に大量遭難事故の一報なんだから背筋凍った。しかもこれまた同パターンだったんだよね。つまりは2002年の事例と。こういうわけで、私は登山はしないしとくに興味もないけど、この事故のことは一生わすれられないと思う。しかも文庫化に気づいたグッドタイミングでまた例の会社がやったみたいだしさらに印象が強まったではないか! みたいな。

当時マスコミでは「体力がないうえ山を甘く見ている中高年がうんぬん」という論調もあったけれど、それが正しくないことはこの本を読めばわかります。この登山メンバー少なくとも絶対私よりも元気な人たちばっかだわ。

私がその場にいたら還暦こえたおじいちゃんおばあちゃん捨て置いて真っ先に死ぬ自信ある。私が体力ないのもそうなんだが、「こんな雨の中登れるか! (18人は下山するとしても)オレは残るぞ!」なんてフラグセリフ言いだせないし。ちなみにこれ生存フラグだから間違えないように。ちなみに実際にも「俺は生きて帰りたい!」と仲間を見捨ててフラグを立てた人が生き残ってたりする。

すべてが終わったあと第三者が見ると、「こんな状況で下山したら死ぬに決まってるじゃんこいつらバカじゃね?」と思えるようでも、自分がその場にいたらこんな状況で下山すると思ってしまうのがツアー登山、もっと一般化すると集団行動のおそろしさ。

そして一度間違って下山するという判断を下してしまったらもう最後になってしまう、それが低体温症のおそろしさ。その判断は、間違いつづけてしまいます。脳が動かなくなってまともな判断ができなくなってしまうのが低体温症なのだから。(といってもこの事例の場合、遭難メンバーが下山する日にさらに次のパーティーが来て小屋をつかう予定だったそうで停滞という選択肢自体ができなかった可能性がなきにしもあらず)

ただ、台風のような雨風のなかで判断力すら失っておかしくなるというおそろしい状況のなかで、頑張って仲間を助けながら下山しようとした、という人がたくさんいたのはすごいことだと。

私が最初にこの事故の報道を追いはじめたときは、「なんでこんなバラバラに死んでるんだ、ひとりひとり勝手に下りたのか……」と身ぶるいしたけど、情報が揃ってくるととそうじゃないことがわかった。どうしようもなくて、しかたなかったんだよ。

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』 登山しない人にも良質なノンフィクションとして、集団におけるリスクマネジメントの書として、おすすめ、です! 無料で見られる「トムラウシ山遭難事故調査報告書」(pdf)もあわせてどうぞ。

読み終わったらこれまたまた同パターンの小説『八甲田山死の彷徨』を読むとさらに寒くなれます。(当時Remember11考察のために読んでいた小説のひとつ)

最後に。山で死ぬと2ちゃんねるの「パンパカパ~ン♪ また死にました」っていう伝統あるスレに載っちゃうから山で死んではいけません。「山で死ぬのはくだらない」ゆえにいわゆる不謹慎なタイトルになっているとかいないとか。
タグ: 本・SF

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