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山本弘『アイの物語』

アイの物語 (角川文庫)鉄人兵団の情報も出てきているようなのでロボットSFの名作を紹介。テーマは「ロボットの心とは」「現実とフィクション」あたりか。

ちなみにMy Merry Mayファンは必読です。この記事読んだらすぐ本屋いきましょう。鉄人兵団ファンも一読を勧めます。この作品はまさに鉄人兵団(人間に憧れるロボットの話)のアンチテーゼ。読んだことで、映画全体の印象が変わるかもしれません。

さまざまなところで創られてきた、人間になろうとするロボット。しかし、人間ってロボットが憧れるほどすばらしい生き物?

鉄人兵団でも言われている通り、人間は憎み合い、殺し合い、理屈に合わないことばっかりしています。心の揺らぎなんてロボットから見れば明らかに不合理なもの。つまり、ロボットが人間になりたいだなんて、思うはずがない。

もうひとつ、ロボットものの命題「ロボットに心はあるか」
人間はどんなときにどんなことをするか、どんなことを言うか、パターンはある程度決まっています。そのデータを集めていけば、あるときロボットに「心」が生じることはあるのではないでしょうか。

そのとき、ロボットはどんな行動を取るのか? 人間に対して反乱を起こすのか? それはない。

それはなぜか。その答えは本書の登場ロボット、アイビスが語ります。ロボットこそが完全という世界観。行きつく先は、人間とロボットの共存。これから、文学の価値を問う壮大なメタゲームが始まる。

さて、本当にロボットが「心」を持ったらアイビスみたいになるかはちょっと疑問。人間との対話の中で対応を学んでいくのだから、反逆を起こすのではないかという考えを私は拭いきれない。

でも、ロボットと人間の考え方は根本的に違うというのも確か。言語のみを通した人間コピーがロボットなのかな。観念・思想的なものはコピーされない? でも人間の思考はある程度言語に縛られているから……あーわかんない! 人間は心を持つロボットを造ってもいいのだろうか。悩む。

ちなみにロボット三原則なんて役に立ちませんからね。

あいまいな命令であるロボット工学3原則を理解できるようなロボットは、もはやプログラムに縛られない存在だろうと語った。
山本弘氏、「人類は異質の知性を受け入れなければならない」と語る:Robot Watch

聖者の行進 (創元SF文庫)
聖者の行進 (創元SF文庫)適当にロボット三原則持ちだす前に本家本元アシモフの「心にかけられたるもの」は読むべし。……しかし収録本の『聖者の行進』が絶版とかひどすぎる。

あと、もうひとつ気になったところ。(以下『アイの物語』ネタバレ反転)
ロボットは完全、人間は不完全と言われて素直に受け入れていいものか? 相手が完璧すぎるとなんか腹立つのが人間ってものじゃないですか。「納得できるけど、納得しない!」という人間らしい意気込みがあってもいいのでは。ただ、渇いた筆致で描かれた世界ですから、この作品に限ればこのオチのほうがしっくりくるかな。

しかし、山本弘よく書いてくれた。私自身、人間すばらしい系の考え大嫌いでして。(別にアンチ人間ではありません。あと、鉄人兵団は普通に好き。というか大好き。やっぱり鉄人はロボットの話と見なさないほうがいいな。そのほうがすっきりする) 

ちなみにこれは人間とロボットの話で非現実的に思えるかもしれませんが、十分現実に適用できる話です。たとえば障害者とのコミュニケーション。

失礼じゃないか?
すべての人間をデフォルトで「私と同じようになりたいと思っている」とみなすのは。障害を持つ人をデフォルトで「健常者未満」とみなしてはいないか?
手話で増える聴覚障害者:科学に佇む心と身体

そうそう。まさにこれなんですよ。耳が聞こえないことに誇りを持っているというのは普通にありだと思います。

世の中にはアニメとかライトノベルとかドラえもん好きなことに誇りを持っている人もいるんだし!(注:私はそれほどアニメやライトノベル好きではありません)

まあとにかく。世間一般から見れば特殊であっても、皆人間なんだよってことは忘れてはいけないと思います。

で、最後にあいかわらずMMMbeの話なんだけど。
「人間になりたいと思わないの?」という詩音の返事が痛烈すぎる。これ、「リース、君には心がある。→良かったね」という主人公への素敵なアンチテーゼ。

もっとも、リース編はそういう主人公の立場に疑問を持たせるようにも描いていると思うんだけど……。正直西川さんの意図が読めなすぎる。人間の心はすばらしいものという主張を押し付ける愚かさを描いたのがリースBであり、これがリーストゥルーエンドだと私は思ってるんですが皆さんはどうなんでしょう。

余談。詩音が「マスター」と主人を呼んだとき、Mayリースを連想した。詩音、リースと似てクールだし。
タグ: 本・SF
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