Entries

『結晶銀河 年刊日本SF傑作選』

結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)毎年恒例のSF傑作選、今年も登場です。しかし、SFアンソロジーとしてはいつものメンバーで、まったく知らなかったのは白井弓子・伴名練・酉島伝法のみ。

これじゃ新鮮度は低いから発掘は期待できないかな? と思って読み始めたがそんなことはなかった。白井弓子がまさかのダークホース。

そんな白井さんの作品は、収録作唯一のマンガ「成人式」 女の一生を経験するという成人式に挑戦する女性の物語。大事な子どもが死んだり人付き合いが上手くいかなかったり人生失敗ばかり。そんなつらい目にあってまで大人になる必要あるの? と私は思ったりするのですが、彼女はどんなことがあってもあきらめなかった。

その結果、彼女は救われたんだと思います。生きているってすばらしいよ! 私もがんばって生きるよ! と思わせる生命力がある作品。

ラストの2コマはなんとなく上田早夕里『魚舟・獣舟』の表紙を連想。ああいう命あふれる絵、大好き。ついでに作品の魅力を伝えるのに短編じゃ足りてないというのも「魚舟・獣舟」と同じなので長編にして出ないかな。

なんとなく風の噂で聞いた『WOMBS』は白井さんの作品だったのですね。これ含め他作品買い決定。

さて、私的に印象に残ったという意味では白井弓子の作品がトップだけど、総合トップは長谷敏司「allo,toi,toi」

規制社会を描くと聞いて、直前に配置されている山本弘「アリスへの決別」系の話を想像していたら、実際は人間の脳に手を加えて感情をコントロールするという、内省的で哲学的な作品でした。

本当は規制社会の全体像を描く伊藤計劃風な作品を期待していたのだけれど、イーガンすぎて凄すぎてそんなことはもはやどうでもよくなった。イーガン「しあわせの理由」が好きな方は読むしかない。

同作者の『あなたのための物語』はなにがおもしろいのかさっぱりわからないにもかかわらず、おもしろかったという不思議な作品。NOVA3「東山屋敷の人々」も良かったし、今後も期待。

ほかには異形コレクションから上田早夕里・瀬名秀明、NOVA2から津原泰水が登場し健闘していた印象。個人的に気に入ったのは以上の5人です。しかし、個人的な好みを除いても全体的にレベルの高い作品が勢揃いなので、1000円出して買う価値はあり、です。

ただ、ひとつ他人の尻馬に乗って(@RappaTei)文句を言わせてもらうと、NOVA2の恩田陸「東京の日記」が無いのは私も納得いきません! 規制モノを2作入れるなら収録作で一番出来が微妙な山本弘よりもこちらを入れるべきだった!

解説いわく去年は直球SFが多かったそうなので、SF色薄めな恩田陸を入れられなかったというのはわからないでもないです。でも、そんななかに恩田陸作品を入れれば強力な毒が入っていながら場をなごませる異色作になったと思うのですよー。あれはかっちりしたSFではないけど、小説としてはものすごく出来が良かったから。

以上、恩田陸と山本弘関係だけは私的に残念でした。あとは問題なし。おすすめ!

関連記事:
上田早夕里『華竜の宮』山本弘『アリスへの決別』『NOVA2』
タグ: 本・SF
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://iandmeandwho.blog107.fc2.com/tb.php/159-d03ff29e

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

トラックバック

Appendix

プロフィール

shui

Author:shui

Twitter:@shuijiao4

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
プロフィール画像:©SozaiRoom

ユーザータグ

検索フォーム

QRコード

QRコード