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米澤穂信『さよなら妖精』

さよなら妖精 (創元推理文庫)Story Seller 2011でバングラデシュを濃厚に描いたあの米澤穂信が帰って(?)きた! 舞台は日本であり旧ユーゴスラヴィアでもある。しかも、複雑な背景があるユーゴ紛争を絡めてジュブナイルとしてまとめるその力量には感嘆。

デビュー作の『氷菓』・2作目『愚者のエンドロール』を読んではいはいラノベラノベと見捨てた方もいると思うのですが、米澤穂信は3作目で化けるという噂とStory Sellerシリーズの抜群の安定感を知っていた私はそんなこと気にしないのであった。

そして案の定それで正解でした。私が読んだ(=文庫化した)米澤穂信の長編のなかで、いまのところ一番好き。

前2作のラノベっぽい文体は抑えられています。(それでも苦手という方はいそうですが)かつ冴えているギャグは冴えている。最初の英語で話しかけるエピソードは図書館で笑いをこらえるのに苦労しました。

しかし、それ以上に私が魅力を感じたのは、ユーゴスラヴィア出身のマーヤを中心とした異文化コミュニケーションから生まれる微妙な距離感。そして生まれるクラスメートとの距離感。序盤から中盤がつまらないという感想もあるみたいですが、私は話が深刻化する後半よりも、ズレた感じが楽しめる序盤のほうが好みです。

Story Seller 1の「玉野五十鈴の誉れ」でも思ったけど、米澤さんってこの距離感を描き方が絶妙。『さよなら妖精』では、マーヤもいいけど、同級生のセンドーも……。

ラノベ的なおちゃらけが少なく終始クールな雰囲気が貫かれるこの作品はジュブナイルが好きでない私にも大ヒット。この冷静さを牽引したのがセンドーもとい大刀洗万智。彼女の功績はさりげなく大きい。米澤キャラのなかで一番好き。

異文化交流の話としても、ジュブナイルとしても良質な小説でかなりオススメ。

それにしても、(ネタバレ反転)マーヤって普通に考えればものすんごく怪しいキャラだし、物語導入部分でセンドーが「もう忘れたい」と言っていたから、マーヤはユーゴのスパイでそれがバレて帰ったんだと勝手に予想していたら全然そんなことなかった。いや、でも、やっぱり白河の家に転がり込むあたりは強引すぎ……。

最近はラノベ作家から一般小説作家に転身する方が多いから油断できない。「玉野五十鈴の誉れ」「満願」(Story Seller 3)のような昭和な雰囲気バリバリの作品を最初に読んでいる私は『氷菓』のラノベ色の強さにびっくり。

古典部や小市民シリーズのように気取った主人公の一人称小説は基本嫌いなのだが、『さよなら妖精』のように化けるかと思うと全部読まなければならない。罠すぎる。現に少しずつおもしろくなってきてる罠。『ふたりの距離の概算』文庫化はやくー。

余談。

マクロイに藤子SF短篇「気楽に殺ろうよ」の元ネタと思しき一篇が入っていて驚きました。(中略)「ところかわれば」(晶文社『歌うダイアモンド』所収)ですー。米澤穂信 :Twitter, 1, 2

ああ~~!!! 私の隠しネタをばらされた! まあ、使う予定は無かったから別にいいんだけど……。他にもあまり知られていない元ネタ作品たくさんあるから皆さんSF(をはじめとした小説)をよろしくね。

関連記事:
この米澤穂信がすごい! 分野別書籍リスト
『小説新潮 5月号』(Story Seller 2011)
タグ: 本・SF
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