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河北新報社『河北新報のいちばん長い日』

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)まず、上田早夕里『華竜の宮』の日本SF大賞をお祝いします! 本当におめでとう!

1995年の阪神・淡路大震災の筆者の経験がこの作品に生かされていると感じています。それは、いま軽く読み返してみてはっきりとわかりました。この作品に描かれている問題は、3・11大震災でも起こったことだったから。SF大賞の件は抜きにしても、この作品をいま読まずにどうすると。

ちなみに600ページと分厚い作品ですが、そんなのよめねーよな方に朗報です。

この作品、二段組みです。

がんばって♪

まあ、私はプロローグ読んだ時点で読み終わるのもったいねーって思ったのでたぶん大丈夫です、たぶんね。ちなみに、以前書いた感想はこちら。あえて、My Merry Mayファンにもおすすめしてあります。:上田早夕里『華竜の宮』

そういうわけで本題。今回は3・11絡みで河北新報社『河北新報のいちばん長い日』を取り上げます。

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙まず、被災地にいて一日以上の停電に苦しんだ方、ぜひ読んでください。

電気が復帰してやっと情報が入ると思ったらチェーンメールばかりTwitterはデマだらけ、あげくの果てにメディアでは「Twitterが役立った!」という声があがってて失望した方たくさんいると思うんですよ。

そして思うはず。新聞はものすごく役立ったと。この本に登場する方々は、それを代弁してくれます。設備の故障で出版不能の危機にさらされながらも、新潟日報の力を借りて印刷することができた号外。でも、もう夜だし、停電だから避難所に持っていったって無駄じゃないのか。

でも、そんなことはなかった。避難していたひとびとは携帯電話の明かりを使ってむさぼるようにそれを読んだのです。停電で、テレビやインターネットで情報を得ることができなかったから、ラジオと新聞だけが頼りだった。

が、その日の号外や次の日の朝刊なんて、この大震災の序章にすぎず。実際に津波に襲われた南三陸町へ取材に記者たちは絶句。まさに、街は壊滅状態。亡くなった幼い子どもにも出会うも、遺体回収よりも生存者救出を優先しなければならない現実。記者は、カメラも向ける気にも話を聞く気にもなれなかったのだった。

一方で石巻市。(市町村単位では今回もっとも犠牲者が出たまちです)
ヘリをとばしていると、小学校の屋上にSOSの文字と手を振っているひとを見つける。でも。

「ごめんなさいね、ごめんなさいね、ごめんなさいね……。僕たちは撮ることしかできない。助けてあげられないんだ……」
「なにやってんだ……俺、最低……」(p68)

助けてあげられない。写真を新聞に載せて、間接的に助けにいってもらうしかない。とりあえず、新聞に載せれば助かる、と内心言い訳をする。実際に載った。これで助かるはず! という希望は、じつは、甘かったことが二か月後に判明する……。

記者たちは取材した内容を、新聞でどう書くか? という問題にもぶち当たる。

宮城の村井知事は言う。「死者は、万単位になる」
しかし、この言葉をそのまま書いていいものか。被災者にはショックが大きすぎるのでは……。そう考えて、記者はほんの少し言葉を変えた。

それは、原発事故について書いたときも同じだった。福島原発が爆発した。しかし、ただ「原発爆発」と書いたら被災地に不安が広まるかもしれない。記者は、情報を整理していくうちに、あることに気づく。

そして、福島原発事故を伝える見出しは、他の全国紙とは微妙に違ったものとなった。

でも、死者万単位の話にしても、福島原発の話にしても、見出しを変えた決断は正しかったのか? ただ現実逃避したかっただけじゃないのか? いまでも、記者たちは自信が持てない。おそらく、今後も記者を続けていくうえでも試練のひとつになるのだろう。そもそも、自分は地元紙として何をやったのか? と彼らは自問する。

『河北新報のいちばん長い日』、それは、こんな物語。

最後にひとつ。震災のショックがまだ癒えていないと自覚している方は、これを読んではいけません。そろそろ、この震災のことをまとめてもいいころなのかな、と思っていた私も胸がえぐられるように苦しかったです。(このトラウマ、一生残るのかな……)

まだ、復活していない、と思うのであれば、もうすこしだけ、そっとしておきましょう。無理に気丈にふるまう必要なんて、ないんだから。
タグ: 本・SF
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