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真保裕一『最愛』……と真保作品おすすめ

最愛 (文春文庫)つねづね思っていたのですが、「ファンの怒りを引き受ける立場が必要だった」と語る劇場版ドラ脚本の真保裕一さんはたいへん空気を読めていてすばらしい。

現に新開拓史・人魚大海戦なんて真保さんを批判する方も見受けられたしもう大勝利じゃないですか。アニメは集団作業しかも映像だから文字で書かれる脚本だけで作品の出来が決まらないことなんて常識なんだけど。しかもその脚本にもスポンサーやプロデューサー・監督の意思がはいってるわけだし。

残念ながら私は情強なので真保さんの思惑にははまりません。それより、新魔界大冒険の年に『最愛』(と『追伸』)を出した真保さんの責任を追及させていただきます! 誰も触れてないけど、どう考えてもこっちが問題だろう。

私は真保ファンなんですよ。2007年の『追伸』までの作品は全部読んでるし。25作ですよ、25作。

そのなかでも『最愛』はトップ級にひどい。普段はつまらない作品のレビューは書かないのだけれど、初真保でこれを読んだ方が他の真保作品を避けてしまうとアレなのであえて書いてやる!(最後に真保作品のおすすめをあげるので興味ある方は最後を読むだけでかまいません)

この作品、最初はとっても読ませます。主人公が頭に銃弾を受けて意識不明になった姉と病院で再会し、いままで姉は何をしていたのか? と探るお話です。これ真保作品のテンプレートでもあります。(何かを探し求める話が真保作品には多い)

が、立ち読みで序盤に興味をもった方でもこれを買ってはいけません。展開はご都合主義のオンパレード、まったく感情移入できない登場人物、そして悪い意味で驚愕のオチ。

ダメです。この本を買ってはいけません。

まったく……この話のキーマンである主人公の姉、読者からすればどう考えても変な人なのですが、「姉さんは強い人だ!」とものすごく曲解する主人公とか……もう付き合ってられません。トリックの一種かなにかだと本気で思ったよホント。

いや、これ間違いなく真保さんが書いた作品というのはわかるんですよ。真保さんの悪いところほとんどすべてが爆発した作品だから。主人公がストーカー気質とか思いこみが激しいとか女性の描き方が変とか。

他の作品ではそれが不快にならない程度に抑えられていたり、それ以上に良い部分があるから気にならなかったりするんです。しかし『最愛』はすべてにおいてダメだっただけにどうしようもありません。

運悪く『最愛』に引っかかってしまったあなた。『最愛』にも長所がありました。文章があいかわらず巧い。読ませる。最後まで読ませる。

なんだかんだでちゃんと最後まで読んだ方、多いのでは? そんなあなたは真保ファンになれる資質があります。真保さんの作品はだいたいこうなので。(次作『追伸』は文章いまいちだった……)

奪取(上) (講談社文庫)私からは『奪取』をおすすめします。真保さんといえば『ホワイトアウト』が有名でたしかにあれもいい作品なんですが、私は『奪取』のほうが好みですね。上であげた真保さんの欠点がほとんど出ていないし、なにより全体的に明るい作品で読んでいて楽しい。

『奪取』『ホワイトアウト』のほかは、『取引』『ダイスをころがせ!』『栄光なき凱旋』あたりかな。

真保さんは初期作品で綿密な取材をした作品を書いているので、取材力に魅力を感じたのであれば『奪取』以前の作品を全部読んでみてもいいかも。(ディック・フランシスが好きならなおおすすめ) 『奪取』よりあとは玉石混交の印象です。『ダイスをころがせ!』はもう少し評価されても良かったと思いますが。

それと、『奇跡の人』はかなり『最愛』に近い作品なのでどちらか嫌いな方はもう一方を読まないように。これ忠告。

『最愛』のAmazonレビューを見ると、ファンだからこそがっかりしてる方が多いみたいなんだよなー。わかるだけにつらいです。泣きたいです。

映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い【ブルーレイ版】 [Blu-ray]最後に余談。ドラえもん監督の寺本幸代ファンである前に真保ファンとして断言する。新魔界大冒険の美夜子さんが魅力的なのは間違いなく寺本さんの功績。真保さんではあんな女の子描けない。ええもう、絶対に。

新魔界は私個人が寺本監督好きという理由で大プッシュしますが、真保ファンには合わないかもしれません。ちなみに真保さんは『新・宇宙開拓史』『人魚大海戦』でも脚本を担当しています。この2作も真保的な見どころはとくにございません。
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