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ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~

2012/3/16 映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~ の感想です。

前半戦のクレヨンしんちゃんがおもしろかった。ひまわり名づけエピソードなつかしい。

「みどりって名前じゃおムネが小さくていつまでも彼氏にプロポーズされなくてさびしい休日ばっかりすごすようになったらオラの妹がかわいそうだよー」
ああ、まだそういう時期だったのね……。原作のよしながせんせい&石坂さんの結婚エピソードよかったよ。

新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~
監督 寺本幸代/脚本 清水東/絵コンテ 寺本幸代・矢嶋哲生/演出 山岡実/作画監督 浅野直之


とりあえず以前書いた感想をリンク。

映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 -The Only Neat Thing To Do-
だからあれは、バグなのよ。あなたの言い方を借りれば、心と言う名の。
新・鉄人兵団はエンパシー要素が成功のカギ、ついでにFF13のススメ

他に興味あれば鉄人兵団タグからいろいろ読めますのでどうぞ。

ほとんどは前の記事で書いているので今回は細かい部分を。登場人物の気になったセリフから心情を追ったりコメントを加えたり。

・「大きくて、歩いて、ミサイルを出す……こんなんじゃやだー!」
  ↓
「もうすんごくかわいいの~色白で~手足がすっーと長くてきゃしゃで~背なんかもすらっーと高くってさあ~」
「それじゃあドラえもん、つりあいわるいんじゃ……」
(ドラえもんの青い涙)
寺本さんはやはり寺本さんであった。同じものを感じる。

・「信じられない、タケコプター無しで」(飛ぶリルルを見て)
前から思ってたんだけど。

リルル、地球人の前で飛んじゃダメでしょ。

まずはそこからだ。

・「それ関係ないの」(とザンタクロスがビルをぶっこわす)

旧作だと、

それ関係ないの。

ちゅどーん。

あたししらなかったのよー。

までがセットで個人的に爆笑ものなんだけど、新作だとビルがこわれたあとのガラスが美しすぎて途中で笑いがとまる。あれは幻想的な雰囲気すら感じた。寺本さんGJ。

・「こんなひどい歌きいたことないピヨー!!!」(ジャイアンリサイタル)
ジャイアンの歌ネタはいつも笑ってしまう。歌自体よりも周囲のツッコミがうける。
「わからないの? この音波はきっと悲鳴なのよ!」(人魚大海戦)
冷静にツッコむソフィアさんはさすがの王女様である。

新・鉄人兵団でその後ピッポが歌を披露するとき、「まさかジャイアンよりも下手ってオチじゃ……」と想像したのは私だけではないと信じる。

・「リルルは敵を誘導するロボットだよ? だったら完全にこわしちゃえば」
たまに、リルルは見た目が人間なだけでロボットなんだから殺してもOKのような話を聞くけど、実際の戦争でも敵は人間じゃないと洗脳して罪悪感を薄れさせるのに利用されたわけなんだがそのへんどうなのか。

見た目がかわいい女の子で普通にコミュニケーションが取れる、自分の意志をもっていて死を怖がる、傷ついていて無抵抗、さらにこわそうとしたらかわいいヒヨコ目をうるうるさせて「やめて!」と止めるのはまちがいなく。

そんな相手をぶっ殺すのは相当大きなストレスになって普通の人では精神が耐えられないはず。相手がロボットだろうと人間だろうと、基本は変わらないと私は思う。

じゃあどうして戦争で人が殺されるのって、集団心理とか上司の権威の問題とかいろいろあるのです。まあ一対一の関係で人間どうし向き合ったさいに相手を撃てる人間はほとんどいない。相手が敵だとしても、です。

「ロボットだから、敵だから、殺しても問題ない」のような理屈っぽい空想なんて私は聞きたくない。というのも私は戦争や虐待などを取り上げて人間が誰かを傷つけるプロセスを個人的に勉強してるので、この手の話題には絶対に人の不安定な心がからむと確信してる。

こうみえて私はヒューマニストなんです! そういうわけで、

デーヴ・グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』
スタンレー・ミルグラム『服従の心理』

この2冊は読むしかない。とくに前者は筑摩書房の最高傑作だと思います。

「ぼくのたまがあたって血がでた!」
「だって、ぼくにうたれたら痛がるでしょ。悪くするとしんじゃうかも」

と「ガンファイターのび太」(24巻)で人を撃っておびえるのび太はとても正しい。最悪、PTSDで一生苦しむ。それが人間というもの。

たしか『人殺しの心理学』には、殺人を嫌がる心理が先天的なものか後天的なものかについては書かれていなくて。このへんもうすこしわかれば「思いやりの心」に近づけると思ってます。この本はスーザン・フォワード『毒になる親』と並んで人生でもっとも影響を受けたノンフィクション。これを出したちくまは神。

そして『毒になる親』も「思いやり」について考える格好の材料になりますので読んでいただければ幸いですー。児童虐待・DVのみならず、「いじめ」の心理を暴くノンフィクションとなります。ある理由により、アガサ・クリスティーファンも一読推奨します。読めばわかると思います。クリスティーは天才ってことが。:『春にして君を離れ』感想

・「リルルを直せば、鉄人兵団についていろいろ聞き出せるかもしれないな」
今作ならピッポから聞き出せばいいんじゃね? ああそうか。リルルを直すことを材料にピッポの口を割らせやすくする作戦ですね、わかります。いや雲の王国の交渉のことなんかを思うとこいつ裏でそのくらい考えていてもおかしくない。

それと前に、リルルが心を通じ合う対象として選ばれたのは単なる偶然でリルルが特別な存在というわけではないと書いたけど、それについていちおう補足。

リルルが人間の女の子の姿をしていて話しやすかったというのはまちがいなくあると思います。ただし、人間の姿をしていることはコミュニケーションを成立させる絶対条件というわけではないという意味です。

たとえば人間でいうと、ガタイのいいアフリカ系のひとと日本人そっくりなアジア系のひととどっちが早く仲良くなれそうですか、みたいな問題。日本人としては前者のひととはちょっと距離を置いてしまいやすいと思いますが、時間をかければ仲良くなれる可能性をもっている。そういうことです。(だから「ボーリングの玉と話し合いなんてできない!」というのはテーマには合わないと思う)

・「私がこわれたって、あなたになんの関係が?」「関係は……ない……けど」
原作にあるセリフに「関係ない」という返答を付け加えることで、無償の愛というテーマの強調に成功する寺本さんすごい。そのあと、「意味がわからないわ」とリルルは言うけど、しずかちゃんもきっとわかってないんだろうね。

・「ジュド……」(バーベキューのときに病床のリルルからジュドへ通信)
ああ、ここの語りかけ、どうして挿入したのかと不思議に思ってたけど。リルルが無事(しずかちゃんが治した)ということをジュドにはっきり知らせるためか。それと、直後にさびしそうな表情をして出ていったのを考えると、本来自分は鉄人兵団側ということを思い出される効果かな。

・「まるっきり人間の歴史をくりかえしてるみたい」
えっと……小学生で世界史(アメリカ史)はやらないはず。しずかちゃんあなた何者ですか。

わかった、T・Pぼんを読んでたのか! ……まあ歴史マンガとかで小学生でも知識は得られると思うけど、リルルの話を聞いて速攻でアメリカ南北戦争が浮かぶしずかちゃんやっぱりすごいよ。

「ロボットの歴史=人間の歴史」というのは「ロボット=人間」に結び付くのでテーマを読み解くさいのキーになりますね。

・「とりけしなさい!」
ここ一連のシークエンス神。スーパー寺本タイム突入です。新・鉄人兵団で一番好き。

「いま動いたら、傷が……!」
 ↓
「とりけしなさい!」
(リルル、しずかちゃんを撃って腕スパーク
※傷が開くという直前のセリフ伏線回収。直後にリルルが倒れる理由もわかりやすくなった。しかも!(後述)
 ↓
「もう、あんたなんて知らない!」
※一瞬涙をこらえたあと、感情を爆発させてさけぶしずかちゃんの表情がすんごくいいんですけど! 作画GJ.
 ↓
「(外で人形を見つけて)泣かないで……」
※人形はのちのちもっと深い伏線になると思ったらそんなことなかった。ここはちょっと残念。
 ↓
(リルル、目を覚ましてスパークした右手を見る)
※一対一の関係で完全に敵対したにもかかわらず、しずかちゃんが怪我を治したことを強調! ここまで演出を考えて腕をスパークさせるなんてすげぇぇぇ!
 ↓
「意味がわからないわ……あんなことされたのに……」(しずかちゃんを見ながら)
※しかもここ、隣でしずかちゃん普通に寝てるんですよね、普通に。さっき襲ってきた敵のそばで。そりゃ理解できないわ。
 ↓
(ジュドが通信にはいり)
「もしかしたら、人間も、ぼくたちと同じように……」
「おまえは、自分の使命をわすれたの!?」

 ↓
「でも、リルルが、ぼくを助けてくれたのは……」
「やめて! あなたを助けたのは、ただの気まぐれよ!」

(リルル、迷った表情でしずかちゃんを見る)
※(「まさか、彼女も私と同じように……? 人間もロボットも同じ?」 隣にしずかちゃんをおいた効果がここにも!)
 ↓
「リルル、返事して!」
※(「いや、そんなはずない! 人間は劣った生き物なんだ」と無理やり思いこむ。目を閉じて表情を隠す演出最高!)
 ↓

そして地下鉄シークエンス。

 ↓
「リルル、心を閉ざさないで! ぼくの心を聴いて! ううん、ほんとうはもう、きみだってわかっているはず……」
「やめて!」
(=もう聴きたくない!)
完璧じゃないかぁぁぁ!!! 構成完璧すぎて惚れた。
ここのリルルは悩みに悩んでいるから、「撃って!」と悲鳴をあげるんだよね。

・「ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ」

まだうまく言語化できないけれども、私のなかではっきりと答えが出た。これは間違っている。人間は理屈にあわない行動をしない。

じゃあなんで敵を助けるのかというと、結局は助けたいからという自分のエゴなんだと思うよ。助けたいから助けるというのは理屈にあった行動だよね。

で、人を傷つけるという行動もたぶん源流は同じ。自分のエゴを客観視できずに他人のためだとかんちがいした結果として宗教戦争とかが起こる。

宗教戦争のたとえが理解しづらかったら、このへんの記事を。ありがた迷惑をかけてしまったこと、かけられたこと、誰でも一度はあるでしょ? それです。
善と偽善と無自覚と 続・今回の地震あれこれ @宮城県
日本人の80%はレプリス仮説;レプリス≒アダルトチルドレン

あと、『戦争における「人殺し」の心理学』によると人間は人間を殺すのをいやがるから、敵であることを理由に無条件で殺すのはすくなくとも「りくつにあう」行動ではないよ。

まあ、鉄人兵団でいう「りくつ」っていうのは実際には「完全に客観的な状況だけで判断できる合理的なこと」というのが定義なんだろうし、それにしたがうとしずかちゃんの言っていることは正しいけれども。でも私は人間の心という不確定な存在を入れてりくつといいたい。

もう一度いう。「ロボットだから、敵だから、客観的には殺してもかまわない」のような人間の心を考慮にいれない空想なんて私は興味ない。

・「地球人といっしょにすごし、人間というものを深く知るチャンスに恵まれました」
ここですね。本来なら、こんなことをわざわざ言う必要はなかったんです。しかも「人間を深く知った」なんてそんな細かく。

「事故に遭って意識を失っていました。そのあとのことはわからないので、人間がいなくなった理由はわかりません」
これで少なくとも、短期的にはごまかせた。人間も、自分の身も、両方守ることができた。

最初っからそういうつもりなかったんだと思うよ、彼女。

・「答えたく……ありません……」
「答えたくない」という拒否、大好きです。

たとえば「答えられません」というフレーズだと、「調査中なので答えられません」というようにもともと答えを知らないときでも使えるし、ミスをしたときに都合の悪いことを隠すために使うこともある。訊くほうからしても「どうした、答えられないのか!」と詰問したりするじゃない。

「答えたくない」だと答えを知ってるし言うこともできる。でも、「私」は答えることを望まないという個人的な拒否感が出ているのがいいのです。

少年マンガであればそのあと「リルルになにをするー!!!」と主人公がかっこよく敵の前に飛び出すのが定番なのでしょうが、「死ににいくようなもんだ」と冷静に邪魔をする止めるドラちゃんは素敵だ。やっぱりこいつ絶対黒い。

ここのリルルはものすごく勇気振り絞ったんだと思う。直前にのび太を攻撃して、そのせいで自分の仲間であるジュドを傷つけてしまった。もうのび太たちの元には帰れない。ジュドにも合わせる顔が無い。そのうえメカトピア(司令官)の説得に失敗すればまったく帰る場所がなくなるっていう。精神的にいろんな意味で無理。

だからこそ、のび太ジュドが揃って助けに来てくれたときは本当にうれしかったと思われる。ピッポと再会して彼女は泣いて喜んでいるけど、ジュドが無事だったことはもちろん、自分を助けてくれたことへの感謝もあるのかも。

というかリルル、ジュドを撃った直後に司令に発見されて心を落ちつける余裕すら与えられなかったし。もう寺本さんひどいw 「ドラえもんの青い涙」でもドラのプレゼント(コスモス)を本当の恋人にあげたのを目撃させてドラを追い詰めているあたり、やっぱりこの方ひとをいじめる天才である。

・「わかったんだ。のび太もしずかも、みんなリルルと同じだって」(水たまりに映った自分と向き合うリルル)

わりとスーパー寺本タイム。主に水たまりの演出に強く出てる。

転んで水たまりにはまるというのは困難な状況やギャグで定番の演出ではありますが、ここでは水たまりというギミック自体に大きな意味があります。

「答えたくない」絞り出すような声で答えたのを考えると、あの時点ではまだ彼女はロボットも人間も同じということに確信が持てなかった。というより認めるのが怖かったのほうが正確かな。直前まで必死に否定してたからね。

ターニングポイントは味方であるはずの司令官に吹っ飛ばされたこと。ここで鏡(水たまり)を通して完全に自分と向き合い、メカトピアの思想は間違っていると確信。だから、そのあとは迷いなく司令官に意見を申し立ててる。

・「人間は、私たちと同じように、それ以上に複雑な心をもっています」
想像だけど、制作者はこのセリフを重視してこの作品を創ったのではないかと。

そして、私がMy Merry Mayのプレイをきっかけにずっと、ずっと追ってきたこと、つまりロボットを通した異文化理解の勉強がいろいろ報われたと思った。寺本さんありがとう(泣

・「ジュドまでが我々を裏切るとは!」
まずひとつ。重要な兵器をひとりに預けてはいけません。そのひとりが裏切ったらおしまいです。しかもよりによってあんなやつに預けるなよ!

もうひとつ。やむをえない事情で兵器を預けられるのがひとりしかいないのであれば、最低そのひとりの待遇をよくしましょう。裏切る可能性が減少します。

まとめ:鉄人兵団はリスクコントロールができない組織である。

タイムマシンオチという無茶するよりも、内部崩壊を狙って工作したほうが現実的かも。違うアニメになりそうな気もするが。

・「生まれ変わったんだ! きっとそうだ!」
私はやっぱり実際には生まれ変わってない派。あくまで平和なメカトピアの象徴なのではないかな。再構築されたすべてのメカトピアのロボットのなかで彼女たちは生きている、という。そういう意味では原作よりも「生まれ変わる」理由に説得力あると思います。

あと、タイムマシンオチを使うのであればのび太たちの記憶はないほうがすっきりしたと思う。その場合、リルルとピッポはそのまま出して「あれ? 外に人が? ……気のせいか、不思議なこともあるものだなあ」とのび太に反応させるくらいで。それで観客にはわかるんだから。

以上。たぶんもう鉄人兵団の記事は書かない。My Merry May関係でも同じようなこと何度もいってるし、さすがにネタ切れ。ゆえに私の鉄人兵団テーマ解釈が好きな方はマイメリでもプレイして。マイメリ西川さんとドラ寺本さんは表面的には優しいふりして実際はドSという共通点があります。なんて私好みで素敵なのでしょう。

次回3/23の放送は「わらってくらそう」「のび太の息子が家出した」です。
「わらってくらそう」原作は4ページの名作。アレンジに期待か。
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