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若竹七海「暗い越流」(『宝石 ザ ミステリー2』)

宝石 ザ ミステリー2推協賞短編部門受賞の若竹七海「暗い越流」目当てでひさびさにミステリーアンソロジーを買い。

収録作家は東野圭吾・湊かなえ・誉田哲也・東川篤哉・笹本稜平・東直己・藤田宜永・門井慶喜・小杉健治・長岡弘樹・深水黎一郎・深町秋生・曽根圭介・ 若竹七海で総勢14人でございます。ただし、私が読んだ電子書籍版では東野圭吾が未収録なので注意。

14作(13作)もあるのだから、なんだかんだで若竹作品以上におもしろい作品もあるんだろうなーと思いながら読んだのですが、なんということでしょう、若竹作品がトップです。私はこの作家が好きなんだ、ということを再認識させられました。

そんな収録作「暗い越流」 ミステリーとしてはよくある話。家族の不和も小説のネタとしてはよくある話。目新しい話なんかじゃありません。しかし、若竹ノベルにはネタの新鮮さなど関係なく。そんなありふれた話をクールな主人公があくまでも淡々に浮き彫りにさせるのが魅力なのです。この突き放し感が最高なのです。そんな文体がすばらしいのです。

依頼人は死んだ (文春文庫)同作者の葉村晶シリーズ好きな方は読もう、読みましょう。文章のキレっぷりがあいかわらずで安心できます。

ちなみにアンソロジー収録の湊かなえ「蚤取り」は若竹七海とは対照的。鬱作品大好きな私ですけど、この人とは相性悪いなあ。こちらは人間の悪意ドロッドロ。語り手がもう病的なので、あることないことみんな悪く取っちゃって、読んでいて気持ち悪くなる。(←ほめ言葉。気持ち悪いとまで思わせたら作家の勝ち) 同じ理由で私は沼田まほかるも苦手だったりして。

悪いうさぎ (文春文庫)若竹作品のほうは語り手が悪意ふくまず冷酷なまでにカラッとしてて、おかしな部分だけが浮き出る描写をする。主人公がクールすぎてこわいともいう。それでも、ジメジメしてないあたり私は若竹さんのほうが好きです。

それにしても、なんで若竹作品は『依頼人は死んだ』と『悪いうさぎ』しか電子化されてないんですか。東京創元社出身のマイナー作家だからですか! せめて葉村シリーズ1作目の『プレゼント』を電子化おねがいします中公新社さん。

そして若竹さん、葉村シリーズの新作まだー? 「あんたじゃ無理だ、邪魔だ引っ込んでろ、という言葉を、婉曲かつ丁寧に伝えるすべはないものかと考えた」(『悪いうさぎ』, Kindle位置No.708)みたいな葉村晶を私また見たいです(><) 『悪いうさぎ』ではすべての事件がつながってそうで全然つながってなく、単に不幸フルボッコなだけの葉村晶には笑った。若竹さんひどい。

追記 『宝石 ザ ミステリー3』に若竹作品ふたたびですが、文章のキレは「暗い越流」と比較していまいちか。:若竹七海「幸せの家」(『宝石 ザ ミステリー3』)感想?

2014/3/28 追記2
表題作をふくむ短編集『暗い越流』が単行本化。葉村晶シリーズの「蠅男」と「道楽者の金庫」が収録されました! 同時に光文社の若竹作品がKindle化です。みんなであの黒い世界を楽しみましょう。とくに「蠅男」は安心の葉村です。

2014/11/12 追記3
葉村シリーズでは13年ぶりの長編新作『さよならの手口』が刊行。文春ならKindle版が出るであろうと期待します。「相変わらずひどい目に合いまくる」というのが作者の言。なにそれよみたい。
タグ: 本・SF
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