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有川浩 『空の中』

空の中 (角川文庫)NOVA2を読んでSFプロパーの自分に反省。もっとSF色の薄いのを読もう、ということで現在熱烈な人気を誇るライトSF作家有川浩にチャレンジ。デビュー作の『塩の街』は普通だったのであまり期待しないで『空の中』に入る。その結果。

なにこれおもしろすぎる。なんでこのひとこんなにおもしろいことを冷静に書けるんだ。人気のある理由がわかった。

小説の中のキャラクターは大真面目に自分の役割を果たしてるにすぎないんだけど、読み手としてはそれがなんか笑える。「こんにちは、お昼のニュースの時間です」とか「某国が文句つけてきた」とか、挙句の果てに中盤に内閣が先走って大変なことになるところとかかなり深刻な状況なのに、シュールすぎて吹いてしまった。

しかし一番のツボは、分裂して勝手に動き出した→DIDの治療をしよう! いったい作者の頭の中はどうなってるんだ。普通考えないぞこんなの。
 
微妙に変な状況を真面目に書くというのは同じく怪獣ものの山本弘『MM9』にもあったけど、筆力の点で有川さんのほうが上手。

あと感心したのは航空機の描写が凄い。有川さんそのへんのマニア? かと思いきや調べたのか。(作家の読書道:WEB本の雑誌) さすがプロ。詳しくない私としては流し読みで雰囲気つかむしかないけど、小説における現実感って大事。明らかに嘘っぽいところがあると醒めてしまうから。

しかし、初めは『塩の街』程度のSFかと思いきや、これ結構ハードなSFじゃない…? シェクリイ+ティプトリーJr.みたい。あと金持ちで聡明なお嬢様は小川一水(プロジェクトXに出たいなんてセリフ出てくるし)を連想。にもかかわらずあまり堅さを感じないのは作者の技量か。
 
もっとSFにしようと思えば、それこそスタニスワフ・レムのように価値観が人間と完全に異なったUMAにしなきゃいけないのかもしれない。でもそこまでやっちゃうとハードになってしまうし、エンターテイメントとして成立するかも怪しくなるので、この路線は正しい。あの片言なディックとフェイク(UMAの名前)が良いんだよね。

MM9 (創元SF文庫 )
MM9 (創元SF文庫 )……なんかこうSFに結び付けられる時点で有川浩に手を出したのが間違いだったような気がするけど気にしない。楽しければいいのだ。もちろんSF者以外の方にもおすすめ。

『空の中』が気に入った方は山本弘『MM9』もどうぞ。MM9は特撮への愛が溢れていると聞くので、特撮ファンも是非。

関連記事:『海の底』感想『図書館戦争』感想
タグ: 本・SF
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