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続・鉄人兵団のオチは反則

しつこいかもしれませんが鉄人兵団論再び。あのオチはやっぱりいけません。前回に言ったこととたいした違いはありませんが、若干視点を変えていきます。前回の記事はこちら:鉄人兵団のオチは反則

タイムマシンというのはすべてを無かったことにする解決法。ならばのびしずとリルルの友情や鉄人兵団を相手に戦った5人の結束なども当然無かったことになる。(本来なら5人に鉄人兵団の記憶は無いはず) それ悲惨すぎませんか?

現実世界と同等に、物語の中で紡がれる世界や人間にも独立した価値があり、読み手もその影響を受ける。それを歴史改変で無かったことにできるというのは物語の意味自体が失われることになります。

たとえ天国みたいなメカトピアが生まれても、再び歴史改変によって壊される危うさを持った世界となる。物語自体の価値も消滅し、「単なる架空の物語」でしかなくなる。こういうメタ的な手法はあまりすべきでないと私は思います。

(ちなみにメタを物語の構造そのものに導入することによって世界の虚構性を描く作品もあります。しかし作品名出した時点でネタバレになるので出せません。叙述系の作品はつらい……)

そういえば映画本編の中で「この映画を見ている人以外は信じてくれないよ」というセリフがありましたけど、これはいらない。私は醒めました。

大山ドラってたまにメタが……「浦島太郎のなぞに挑戦」のラストとか。このあたりは賛否分かれるところでしょうか。私はメタ嫌いなので好きではありません。

今回は時間軸一本で考えましたけど、パラレルワールドで考えても似たようことになると思います。グレッグ・イーガンや神林長平など、無数のパラレルワールドがあるなかで自分の存在意義は何か? を考える作品は現実に存在するので。

時間がメインギミックの話や、パラレルワールド前提のノベルゲームとかなら読者の了解がありますが、鉄人兵団のようにほとんど伏線無くこのような大オチはいくらなんでもまずいでしょう。

とここまで書いておいてなんですが、世の中なんでも正攻法で解決するわけではないし、5人がリルルのことを完全に忘れる切ないオチなら個人的にはOKかな? という気も。SF短編の「影男」がそんな感じだった。リルルに救い無いけど、それは時間改変の重大性を観客に伝える代償ということで。

それでもなんとか救いを出そうとするのなら、観客だけにわかるようにチラッとリルルを映すとか、「のび太を愛した美少女」の青い鳥のようにメタファーを使うなんて手も。

おお、タイムマシンオチでも結構いけるんじゃない? やらないにこしたことはないけど。とにかく、時間改変とはどういうことなのかという問題提起がされてれば(=少なくとも5人の記憶が無くなれば)タイムマシンオチでも私はまあ構わないかな。原作はきれいすぎ。

しかし、ロボットに「あたたかい心」を植え付けるという解決法もまたイマイチなのが問題か。無理が多すぎる。やっぱり根本的にオチ変えたほうが絶対楽。

大長編のロボット物語は鉄人兵団・ブリキの迷宮・ロボット王国の3作があるけど、どれもロボットSFとしては微妙なんだよなあ。

ドラえもんにおけるロボット系物語というのは、まずロボットもしくは人間側を詳しく描写して、どちらかを論理的に追い詰めていかないと上手くいかない。なぜならドラえもんはロボットがいることが前提の物語で「ロボットは人間の友達だ」なんて当たり前のことだから。

単にロボットor人間を敵視する敵が出てくる→ロボットと人間は友達だ!→敵倒す だけだとあまりおもしろくないでしょ? それなら別にロボット出す必要ないし。極端なことを言えば、クラスになじめない転校生の話でも成り立つ。

「ロボットは人間の友達」という前提を一旦解体してからロボットと人間の関係を再構築していくのがドラえもんでロボットをギミックとする話の正しいやり方であり、SFの醍醐味。これはロボット・異文化コミュニケーション系SF読んでないとできないし、読んでいても難しい。

つまり、ドラでロボットものは自ら地雷踏む行為だと思うのですがどうでしょう。F先生も描けているとは言いがたい。というか描けてない。

ということでドラ誕生日スペシャル大丈夫なの? いやハードSF面なんて全然期待してなんていないんだけど。でもせっかくなら完成度が高い話が見たいじゃないですか。

追記:誕生日スペシャル名作でした。ごめんなさい。「決戦! ネコ型ロボットvsイヌ型ロボット」感想

本を2冊紹介しておく。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)現代SFの頂点、グレッグ・イーガンの短編集。「無限の暗殺者」がパラレルワールドとアイデンティティを扱った話です。ただし、この短編集の中でおそらく一番難解。精神的に余裕があるときに。

そもそもイーガン自体、疲れているときに読んではいけません。短編一作でエネルギー使い果たす勢いだから。

アイの物語 (角川文庫)
アイの物語 (角川文庫)物語の「独立性」を強調してフィクションの素晴らしさを説く山本弘の連作短編集。いい意味で鉄人兵団のアンチ的な要素も入っています。ロボットと人間の関係を探るうえで必読もの。

そういえば、最初の話が小説の中の小説の中の小説とメタメタメタ。最初、かなり混乱した。

あれ。山本先生、藤子全集の21エモンの解説書いてたんだ。地球人と価値観が違う宇宙人を描いていてすばらしいというのはそのとおりだなあ。「アメリカSFの宇宙人は人間と戦うか仲良くなるかの2択しかなくてけしからん。本当に『未知のもの』はそういう問題ではないだろう!」と言ったのはポーランドのスタニスワフ・レムだったか。

日本でのレムの紹介はアメリカよりも早かった(日本:60年頃・米:70年頃)から、21エモンが描かれた1968年当時「異文化コミュニケーションの難しさ」を描くSFは日本のほうが進んでいたのかもしれないな。すごいよ! 21エモン世界最先端SFだよ! とむりやり褒めてみる。

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)読みやすく21エモンよりリアルな異文化コミュ話をご覧になりたい方は有川浩『空の中』がバッチリ→『空の中』感想 

『空の中』なんて全然リアルじゃないぜ! と満足できないハードな方はレム系統のR.C.ウィルスン『時間封鎖』がいいかも。リアルさを求めるとレム系宇宙人しかなくなりそうだから難しい。

もっとも、有川さんが「レムによると全く違った進化をした知的生物どうしは互いを理解できない!→わかってるよそんなの。でも相互理解が不可能なら人間的思考に当てはめるしかないじゃない!」(文庫版『空の中』p446を私が勝手に解釈した)というひとことでテキトーに済ませているのを読んで私は有川さんに惚れたけど。明らかにこのひとわかった上でやってる。

なんか山本さんのせいで4冊紹介してしまった。全部名作だからいいか。山本さんはブログでエスパー魔美についても熱く語っているのでこちらもお見逃しなく。
『エスパー魔美』を最初から読んでます:山本弘のSF秘密基地BLOG

あ、それほど薦められる作品ではないんですが、先日出た『アリスへの決別』が微妙に魔美っぽかったです。→『アリスへの決別』 感想

次の『少年SF短編1』解説の大森望さんにも期待。
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