Entries

森岡浩之『夢の樹が接げたなら』

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)凄い。凄い。凄すぎるよ森岡浩之。

世の中にはときに、心にズギューンとした衝撃を与える作品がありまして。私にとっては 『My Merry May』とかポール・ディ・フィリポ「系統発生」とか。他にもいくつか。その中に、これからは森岡浩之「スパイス」を入れます。

あー生きてて良かった。一年に一回は世界のすべてを変えるような出会いが欲しいな、といつも思っているのですが、これで今年の目標達成。私は幸せです。この上なく鬱だけど

ということで紹介しなければならない。藤子F or My Merry May ファンは、いやすべてのひとが一度は読むべし。NOVA3やゼロ年代日本SFベスト集成<F>で森岡さんの作品に興味を持った方もどうぞ。

『夢の樹が接げたなら』は「夢の樹が接げたなら」「普通の子ども」 「スパイス」 「無限のコイン」 「個人的な理想郷」「代官」「ズーク」 「夜明けのテロリスト」 の8作が収められた短編集。この中でおすすめしたいのが「スパイス」という作品。この一作で800円の価値あり。これは久しぶりに鬱耐性が強い私の心をえぐった。

人間の定義とはなにか。
ヒトの男とヒトの女の間で生まれたもの、これはヒト。
では、ヒトの細胞からクローンを作ったらそれはヒトだろうか。
さらに、ヒトの細胞等をまったく使わずにヒトそっくりなものをつくったら、それはヒトといえるのか?

そして、ヒトがヒトであるために必要な「心」の存在。心とは何か。コンピューターの Input/Output それは心といえるか。ああすればこうする、こうすればああする、そのデータが極限まで集まれば、それは心ということができないか?

この作品はこの2つを掛け合わせ、ヒトにあらざるヒトを作ってしまいます。ここまでは他のSF作品にもある話。My Merry May にも似てる。

問題は、それを藤子SF短編「ミノタウロスの皿」風にしてしまったところ。つまり、ヒトにあらざるヒトに人権は無いのだから。

これ以上は説明できません。ぜひ読んでみてください。ある意味、夢いっぱいの話ではあるのだけど、ここまで純粋に徹底的にやられるともう言葉にしようのない感情が。もう存在自体が許しがたい話。でも人間の心にはこのような一面があるのも事実。

悔しい、悔しいんだよ。否定できないこの気持ちが。もどかしさが。この話だけは人間としてありえない。でも、理屈で論破できない。いったいなぜ……もうこの世界狂ってる。

ということで森岡さんGJGJGJ.こんなのよく書いた。(下手すると作者の人格疑われそう……)

ちなみに他の短編も個人的に大当たり。ここまで的中した個人短編集はそうない。

表題作「夢の樹が接げたなら」は言語SF. 言語が脳に移植でき、人工言語を作るデザイナーが存在する。さて、言語が認識を支配するものであるのなら?
私は人工言語をインストールするのが怖い。なんかヒトじゃなくなるような気がする。名作。

あと気付いたのは「夜明けのテロリスト」もなかなかマイメリチック。「普通の子ども」がQ'tronゲームErdeみたいな設定。長井or西川さん読んでた? それとも偶然かな。

どれも設定が真に迫る、すぐ背後にありそうなディストピア世界。これらの現実が胸に突き刺さること数回。そして、どの話も読後に何かおかしいと感じる。でも、それを論理立てて説明できない。これがさらに鬱。このとおり暗い話ばかりなので弱い方は注意。SF短編好きなFファン or Q'tronファンにそんな方いないと思うけど。

「スパイス」もっと内容に踏み込んだ紹介をしたかった。でも、でも、これ以上はもったいなさすぎて話せない。言語SF探しでこの本に出会い、「スパイス」の内容をまったく知らずに読めた奇跡に乾杯。

タグ: 本・SF
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://iandmeandwho.blog107.fc2.com/tb.php/92-51f51afa

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

トラックバック

Appendix

プロフィール

shui

Author:shui

Twitter:@shuijiao4

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
プロフィール画像:©SozaiRoom

ユーザータグ

検索フォーム

QRコード

QRコード