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ぼくの、マシン&逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成

ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S> (創元SF文庫)逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成<F> (創元SF文庫)

確信した。昔の作品のほうが良かったというのは嘘だ。今も良い。

ここだけの話ですが、私は昔、藤子ファンならSF読んだほうがよかろうということで、クラーク『幼年期の終わり』、ハインライン『夏への扉』、国内だと小松左京なんかを読んだのです。

でも、どうしてもおもしろいとは思えなかった。つまらない、というほどでもないんですが、ビビッと来るものは少なくともなかったのです。それで、SFから一度離れました。古典にこだわらずに最近のSF作品に手を出していれば、SFというジャンルから離れずにいろいろな出会いがあったかもしれないのになぁ、といまさらながら後悔。

ということで、SFを読む皆さんも読まない皆さんも、現代日本のとってもおもしろい物語、読んでみませんか? 特に<F>編は、ファンタジーよりの作品が多く、どんな方でも楽しめると思います。

この本を読んでいて思ったのは、ゼロ年代のテーマは「喪失」かな、と。2001年の9・11テロから始まったと言えなくもないゼロ年代。『夏への扉』で描かれているような未来への明るさは、そこには無い。

でも、個人的に思うに、古典SFで描かれてきた明るさは、ある意味まやかしだったのではないかと。正確に言うと、影の部分に目をそらしていただけではないかとも思います。光と影は表裏一体。それなら、ゼロ年代の喪失の裏には創造があると、私は信じている。

……まあ、気取ったこと言いましたけど、なぜ私がこの作品集を評価するか。それは、鬱作品が多いからだ! 明るい作品は私向けではないのだ。これがすべて。ということで、私には現代作品のほうが合っている。

では、気に入った作品の一言レビュー。じつは小川一水「幸せになる箱庭」以外未読。なんてことだ。

<S>
田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」

まったくもーこのひとは。NOVAに続いてヘンなの描いてる。でも、嫌いじゃない。→NOVA1 感想

菅浩江「五人姉妹」
うわ、菅浩江さんって女性だったのね……。漢字の印象から男性かと思ってた。なぜか「浩」という漢字は男性をイメージする。有川浩という(自分にとっての)前例がいたにもかかわらず勘違いとは。これはちょっと自分にあきれる。

というか桜庭一樹さんも女性だったのか! 菅さんはこの作品の文章でなんとなくわかったけど桜庭さんはわからなかった……。ほかにも勘違い大量にありそうな予感。

臓器移植のためにつくられたクローンの話。最後がもう、切なくて、切なくて。

飛浩隆「ラギット・ガール」
……よくわからない。もっと心に余裕があるときに再読する。有名作家の作品がよくわからないっていうのはなんか悔しいものがあるから。好きなテーマなのはわかったし。

<F>
恩田陸「夕飯は七時」

NOVA2ベストの「東京の日記」を書いた恩田陸。しかし、「常野物語」が合わなくて、この作品も合わなかった……。どうももやもやした感じ。もうすこしすっきり終わる話のほうが好きです。うーん、NOVA2で最初に出会ったのは奇跡だったのか。でも、せっかくのNOVA2での最高の出会いを無駄にしたくないなぁ。これからももう少し読んでみよう。→NOVA2 感想

乙一「陽だまりの詩」
ロボットに心が生まれる話。このテーマにこだわりのある私としては、心が生まれるまでの過程は微妙だった。でも、そんなことはどうでもいい。情緒的な文章が私の心を打った。だから、この作品を読んだ価値はあった。

森岡浩之「光の王」
個人的にイチオシ作家の森岡浩之。(一冊しか読んでないけど……) やはり当たり。でも、これって藤子SF短編の「どことなくなんとなく」じゃないですか? いや、種明かしされるまでわからなかったけど。この作品に限らず、このアンソロジーは現実と虚構のはざまを描いた作品多いですね。

大森さんの序文によると、「思い出してはいけないことをうっかり思い出してしまう話」
いや、そういう問題ではないだろう。

石黒達昌「冬至草」
これは凄い。これは怖い。放射線汚染の話が出たとき、放射線で世界滅亡とかのホラーじゃないだろうなと思ったけど、違う意味でホラーだった。一番怖いのは、自然じゃなくて人間、か。

小林泰三「予め決定されている明日」
コンピューターと違って、現実世界にはラプラスの悪魔はいない! とするならば、それが救いのような気がする。

牧野修「逃げゆく物語の話」
すばらしすぎて目眩した。今年読んだ作品の中でもトップクラス。正直この作品を言葉で語るのは私には無理。とりあえず読め。これだけで1000円の価値がある。

タイトルを見て、???と思ったけど、読んでみるとそのまんまだった。


あれ、感想9作品しか書いてない。でも、当たり連発でした。文句なしおすすめ。牧野修・菅浩江・石黒達昌がベスト3かな。菅浩江作品は初でしたが、文体が特に好みだったので他の作品も読んでみようかと。

新しい出会いに、感謝。

タグ: 本・SF
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